毎日・世論フォーラム
第321回
2019年9月24日
参議院議員 鈴木 宗男

テーマ
「日本の政治を考える」

会場:ソラリア西鉄ホテル福岡

北方領土問題の解決策は
“2島プラスアルファ”

鈴木 宗男 参議院議員
鈴木 宗男 氏

プロフィール

鈴木 宗男
(すずき むねお)

1948年1月、北海道足寄町生まれ。70年、拓殖大学政経学部卒業。83年に衆院に無所属で初当選後、自民党入りし、北海道・沖縄開発庁長官、内閣官房副長官、党総務局長などを歴任。ロシア外交に長年関わった。2005年、地域政党・新党大地を設立し、代表に就任。10年、受託収賄罪などで実刑判決が確定し、衆院議員を失職。17年4月に公民権が回復した。19年7月の参院選比例代表に維新の会から立候補し、9年ぶりに国政復帰した。

 参院選で9年ぶりに国政に復帰した参院議員の鈴木宗男氏(日本維新の会)が9月24日、福岡市中央区のソラリア西鉄ホテル福岡であった毎日・世論フォーラムで約120人を前に講演した。
 鈴木氏は北方領土問題について、1956年の日ソ共同宣言で平和条約締結後の歯舞群島と色丹島の引き渡しを明記していることに触れ、「2島の返還と国後、択捉両島での共同経済活動を組み合わせた『2島プラスアルファ』しか解決はない」と強調した。講演要旨は次の通り。
 9月11日に内閣改造があった。私は仕事師内閣と受け止める。政治家はある程度の経験を積まなければ一人前にならない。安倍晋三総理は基礎体力がある自民党時代に戻して、当選6~7回、15年近くやった人を大臣にしている。重厚で安定した内閣でやるべきことをやるという決意の表れ。小泉進次郎さんを入れて、国民の期待感を高めたのも良かった。
 茂木敏充さんが外相になった。私は茂木さんは能力があると思っている。TPP11、欧州との関税交渉もまとめた。改造前には日米の貿易交渉をまとめた。仕事をするなら茂木さんが一番と思う。ポスト安倍の一人と思う。茂木さんを外相に付けたということは、日露の平和条約、領土問題の解決をするというメッセージ。同時に外相だった河野太郎さんを防衛相にした。日米同盟関係が揺るぎないということを示したと思う。国家の基本政策は外交、安全保障、教育、治安。なかでも外交と安全保障は最大の国の基本に関することだ。
 安倍総理は憲法改正を自分の手で道筋をつけたいと強い決意を持っていると思う。また、拉致問題と日朝の正常化、何よりも日露平和条約と北方領土問題の解決。この三つについて残された2年に必ずやってくれると期待を持っている。
 日朝関係では、安倍総理は前提条件なしに日朝首脳会談をしたいと言っている。金正恩朝鮮労働党委員長の妹さんが北朝鮮の社会で大きな存在感を示しているが、妹さんと親しいロシアの有名な方がいて、私は年に2~3回会うが、安倍総理の意向はしっかりと北朝鮮側に伝わっているし、金委員長の耳に入っている。最初から首脳会談のセットでなく、国際会議でさりげなく顔合わせをしてそれから突っ込んだ話し合いにつなげられれば良いのではないか。この人物は、今、米朝間で次の米朝首脳会談開催に動いていると言っていた。年内に動きがあるのではないか。それを踏まえて日朝首脳会談も行われると考えている。
 憲法改正は、自民党の結党以来の国民への約束。安倍総理は自分の手でやりたいという強い決意を持っている。外国の憲法を見ると、何度も変えたり一部修正したりしている。どこの国も時代に合った憲法にしている。公布以来一言一句変えていないのは日本だけ。憲法が公布されたのは占領下だった。いま、世界のなかの日本から、世界をリードする日本になり、日本の力が期待されている。その国が一言一句憲法が変わっていないのは、おかしい。時代にあった憲法は作られるべきだ。憲法改正と仰々しく考えるより、環境権など加筆は必要だと思う。世界中で若い人が地球はおかしくなるという危機感を持っている。環境を守るための国民の義務なんかはどこかに入っていいと思う。インターネット社会、あるいはネットの闇のなかで事件が起きたり、人権がむしばまれたりプライバシーが侵害されている。科学技術は進むので、こうしたこともしっかりと明記すべき点があると思う。まず議論をすることが大切。最初から議論に乗らないのは民主主義ではない。
 日露の平和条約と北方領土の解決。私は日露関係は動いていると思う。歴史の事実として分かってもらいたいことがある。ロシアは北方領土を「戦後の国際的な諸手続きのなかで我々は正当に手にした領土」と言っている。これはロシア側からすれば正しい。日本は1945年にポツダム宣言を受け入れた。戦争で負けて米国の占領下に入って、日本が国際社会に復帰したのは51年のサンフランシスコ平和条約から。サンフランシスコ平和条約で南樺太と国後島、択捉島、千島列島を放棄したことを知らない人が多い。56年の日ソ共同宣言で、日本は歯舞群島と色丹島の2島で平和条約を結ぼうとした。この時、ストップをかけたのが米国。ソ連と平和条約を結ぶと日本が共産化するのでないかということが米国の懸念だった。日本は翻弄され、その後、4島一括返還を求めるようになった。昨年11月、安倍総理は56年宣言を基礎にするとプーチン大統領にカードを切った。私は問題解決はこれしかないと思っている。4島返してくれと言っても交渉にならない。56年宣言の有効性を認める指導者はプーチン大統領一人だ。一番島が近づいたのは、2001年3月のイルクーツク声明と思っている。当時の森喜朗総理は「歯舞と色丹を返してくれ。国後、択捉はどちらに帰属するか協議しよう」と提案し、プーチン大統領も「承った」となった。これで行けると思った。その1カ月後に小泉純一郎さんが首相になり、4島返還を主張。その後は首相が毎年代わり政権交代が起きて空白の10年になった。交渉を戻したのが、安倍政権だ。安倍総理が提案する、歯舞群島、色丹島が日本のものとして国境線を引く。国後、択捉はロシアのものと。さらに元島民が島に自由に行けるなどのプラスアルファ、この「2島プラスアルファ」で十分と思っている。元島民の3分の2は亡くなり今は5700人。平均年齢84歳。人生が限られている。この元島民の皆さんの思いをくみ取ってほしい。一番は自由に島に行くこと。二つ目は国後島の周辺の海を使うこと。三つ目が1島でも2島でいいから返してくれるなら返してほしい。これが元島民の思いだ。

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