毎日・世論フォーラム
2019 新春会員交流会
平成31年2月12日
元ラグビー日本代表 今泉 清

テーマ
「2019ラグビーワールドカップ日本開催と九州」

会場:ホテルニューオータニ博多

スポーツの
夢の大切さを強調

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今泉 清 元ラグビー日本代表
今泉 清 氏

プロフィール

今泉 清
(いまいずみ きよし)

1967生まれ 51歳

1984
大分県立大分舞鶴高校入学
1986
フランカーとして高校日本代表に選ばれる
1987
早稲田大学人間科学部入学後、FB(フルバック)に転向し、早稲田を代表する選手として活躍。
1992
ニュージーランドへラグビー留学後、サントリーに入社
1995
ラグビーW杯 出場
1996
サントリー、全国社会人大会、日本選手権優勝
2001
現役引退後、早稲田大学ラグビー部コーチ、サントリーフーズプレイングコーチに就任
2005
サントリーフーズを退社。早稲田大学大学院公共経営研究科に進学。
公共経営修士。CSテレビチャンネルJ SPORTSで解説者を務める。
現在、大分県ラグビー大使、解説などで幅広く活躍。

 各界の著名人を招いて講演会を開催している「毎日・世論フォーラム」の会員交流会があり、元ラグビー日本代表の今泉清氏が、「2019ラグビーワールドカップ日本開催と九州」をテーマに会員160人を前に講演した。
 今泉氏は「日本のスポーツ界では指導者の指示に『イエス』しか言えないよう指導されるが、選手に指示がどう伝わっているかが重要だ」としてラグビーでのコミュニケーションの大切さを強調。「コーチの役割は選手と共有した目的まで連れて行くこと。そのためにどう役立つのか分かってやるのがトレーニングだ」と指摘した。
 そのうえで「スポーツもビジネスも人と人が協力して一つの成果を出すのは同じ。夢をイメージして口に出し、現実にするために何が必要かを逆算して努力を積み重ねることが成果につながる」と話した。
 講演後、懇親会があり、福岡大学和太鼓演奏部「鼓舞猿」のメンバーによる和太鼓パフォーマンス、西部ガスの道永幸展常務の乾杯で開宴し、会員間の活発な交流も行われた。今泉氏の講演要旨は次の通り。

 今日はラグビーの魅力について話をさせてもらいながら、なぜ日本のラグビーが最近、世界の強豪とそれなりの試合ができるようになったかを話したい。  九州では、福岡と熊本、大分でワールドカップの試合がある。福岡で注目は10月12日にあるアイルランドとサモアの試合だ。両チームとも日本と同じグループなので、どういう試合をするのかチェックしておきたい。
 特にアイルランドのラグビー協会は100年の歴史があるが、一昨年、アメリカのシカゴでの試合で初めてニュージーランドに勝って非常に調子がいい。今はイギリスで6カ国対抗ラグビーが開催されていて、アイルランドは当然優勝するだろうと言われていたが、イングランドに初戦で負けてしまった。  このイングランド代表の監督が、みなさんご存じのエディー・ジョーンズだ。彼は2015年のラグビー・ワールドカップで日本代表の監督だったが、最初に日本に来た時は東海大のコーチだった。その時は選手とコミュニケーションが取れずうまくいかなかった。
 ここでコミュニケーションの話をさせてほしい。コミュニケーションの意味は、日本の辞書には「伝える。伝達。意思の疎通」と書いてある。だいたい日本人のコミュニケーションは、何かを伝えて相手が「分かった」と答えればそこで完了になる。しかし、英語で「CO」で始まる文字は「シェアする。共有する」という意味だ。自分の頭の中にあるイメージと、伝えた人の頭の中にあるイメージが同じになって初めてコミュニケーションが取れたことになる。
 最近、日本のラグビーの社会人チームには外国人コーチが多いが、一番最初に起きるのが、このコミュニケーションの意味の違いによるミスコミュニケーションだ。エディー・ジョーンズも東海大のコーチの後、サントリーのコーチに来たが、彼は指示しても質問しない選手に「なんで『イエス』しか言わないんだ」と言っていた。
 日本の体育会系のスポーツでは、いついかなる時も「イエス」が言えるように訓練される。外国人の監督が来ても「イエス」しか言わない。それでエディー・ジョーンズが頭を抱えて「なんでそんなくだらないことになっているんだ。よし分かった」となった。
 その後、ミーティングが変わった。説明が終わると、「分かりました」と一番気合いの入った返事をした人に「俺が言ったことをもう一回説明してくれ」と言うようになった。そうすると説明できない。そこからみんながメモを取るようになった。エディー・ジョーンズの声が聞こえなければ、聞こえるところまで行って話を聞くようになった。コミュニケーションの取り方が変わった。そしてその年にサントリーは優勝することができた。
 同じように頭に「CO」がつく単語にコーチがある。コーチとは馬車の意味。今の世の中でいうとタクシー。タクシーに乗ったら目的地を伝える。つまりコーチはお客さんの行きたいところをシェアして一緒に行くのが役目だ。だとすればスポーツのコーチもプレーヤーが行きたいところに連れて行くのが役割ということになる。
 またトレーニングの語源はトレインだ。博多から東京に行くのに新幹線に乗ると、決められた時間、決められた線路を、決められたスピードで東京駅に着く。つまりこの練習をしていれば目的地に到達する、この練習をすれば試合のこういうことにつながると分かるものをトレーニングという。きついだけの練習はただの鍛錬だ。
 近年、日本のスポーツ選手のパフォーマンスがどんどん上がっている。それは、まずいいパフォーマンスをしているイメージを作り上げ、逆算してそこに向かってトレーニングをしているからだ。
 日本語の「夢」という字を辞書で引いたら「夜見ている時に見るもの、叶わないもの、儚いもの」と出てくる。英語の「ドリーム」を英英辞典で調べると「つかみ取るもの」と出てくる。英語を話す人にとって「夢」は現実に起こすことだ。
 みなさんにも個人の夢や会社の夢があるかもしれない。どうやったらその夢が現実になるのか、自分の強みを発揮できるようになるのかみんなで話してみてほしい。強いチームは監督やコーチが「集合」と言うとすぐに集まって円陣が小さくてきれいだ。それはみんなが半身になって話に聞き耳を立てているからだ。そうやって言葉によってゴールを共有している。もし何かプロジェクトを持っていたら、もっと具体的に何をするのかを話していく。それがコミュニケーションになって一つの成果につながる。
 ラグビーもビジネスも人と人が協力して一つの成果を上げていくのは変わらない。今日の話でみなさんの心にとどまるものがあったらうれしい。今後ともラグビーを応援していただき、ぜひ今年のワールドカップを盛り上げてほしい。そのためにみなさんの頭の中にあるものを口に出して形にしていくことが大切ではないかと思う。

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