自民党総務会長
加藤 勝信 氏
プロフィール
加藤 勝信
(かとう かつのぶ)
1955年11月22日東京都生まれ。79年3月東京大学経済学部卒、大蔵省入省、内閣官房副長官秘書官、農林水産大臣秘書官を経て、95年9月大蔵省退省し、衆議院議員加藤六月氏の秘書を務めた。2003年11月衆議院議員に初当選(自民党中国比例ブロック選出)以降当選6回。10年自民党副幹事長、12年内閣官房副長官、14年内閣人事局長、15年一億総活躍担当大臣で初入閣。17年厚生労働大臣(働き方改革・拉致問題担当)、18年10月から現職。趣味はセーリング オートバイ(初心者)。座右の銘は「一点素心」。妻、娘4人の6人家族。
第316回例会は、自民党総務会長・加藤勝信氏が「安倍政権6年間の実績と今後の進路」と題し講演、員120人が参加した。加藤氏は夏の参院選の勝敗ラインに関し「自民と公明で過半数を維持するのは最低ラインだ」と語った。自公両党の非改選議席は70で、改選議席は78。「最低ライン」は53議席となる。統一地方選と同じ年に行われる参院選は「自民党の成績が芳しくないのがこれまでの流れだ」と警戒感を示した上で「しっかりした成績を出していく」と強調した。安倍晋三首相の党総裁4選について「結果をまず出していくのが大事だ。そういう中で可能性があるのではないか」と述べた。講演要旨は次の通り。
私は安倍政権で官房副長官、1億総活躍相、働き方改革担当相、厚生労働相と仕事をさせていただいた。この6年間、私たちは何を考え、何をしようとして、今後どうしようと思っているのか。そんなお話をさせていただければと思う。
2012年12月の安倍政権スタート時の最大の問題は、経済の再生、そして少子高齢化と人口減少という構造的な課題にどう取り組むかだった。こうした認識のもと、まずアベノミクスの3本の矢ということで、金融政策、財政政策、成長戦略を進めた。そして為替相場は円高から円安に、株価も8000円から2万円を超える水準に大きく転換した。史上空前の企業の収益が続き、雇用情勢は有効求人倍率がすべての都道府県で1を超える状況になった。
今、ヨーロッパやアメリカでポピュリスト旋風が吹いているが、その背景には現状に対する不満があると思う。もちろん日本でも改善すべき点が多々あるが、国民生活に関する世論調査では、現在の生活に満足している人は我々が政権についてから7%増え、不満は7%減っている。
特徴的なのは、内閣や自民党の支持率が一番高いのは実は20代、30代ということ。かつては若い人に人気のない自民党であり政権だったが、随分変わってきている。その背景に何があるのか。若い皆さんからみれば景気回復が続いているのは大きい。
一方で10月に消費税引き上げという課題を抱えている。2%上がれば5・7兆円の増収。当初は増収分の2割を社会保障の充実に使い、残り8割は借金返済につなげるということだったが、それだと政府がお金を吸収し過ぎる懸念が出てきた。このため5割を社会保障の充実に充て、5割を財政の健全化に充てることになった。
しかし、過去に消費税を上げた時、結果として経済にいろんな影響を与えた。一番気がかりなのは駆け込み需要。上がるからと先に買い込めば反動減が起きる。山高ければ谷深しで、これは経済に大きな影響を与える。そういった観点から今回はできるだけ駆け込み需要が起きないような対応を取っている。
ただ、日本の社会保障のこれからを考えた時、消費税を10%にしても今の制度のままでは持続可能ではないことは多くの方がご存じの通りだ。その財源を確保する選択肢の一つとして消費税がこれから残っていけるかどうか。その意味でも今回の消費税引き上げをうまく導入していかなければいけない。
このように日本の足元を良くしていこうと進めてきたわけだが、ご承知のように日本の少子高齢化、人口減少がこのまま推移をすれば今世紀半ばには人口が1億を割り、今世紀の終わりには6000万人になると推測されている。こうした流れの中で65歳以上のいわゆる高齢者が増え、15歳から64歳の生産年齢人口がこれから大きく減少していくことが大きな課題だ。
ただ、高齢化自体が問題ではない。皆さんが長生きするのは喜ばしいことで、課題は高齢化に沿った社会保障システムがついていっていないということ。この構造的課題にどう対応するかが大事になる。そのためには人手をどう確保して生産性を上げるか。子育てしながら、家族の中に介護が必要な人が出ても働き続けられる環境をどう作っていくかだ。
最大の課題はやはり生産性だ。一体なんで日本の生産性が低迷しているのか。日本の労働者の質は、OECDの調査でみても国語力、数学力、ICTを使う力、どれをもってもぴかいちだ。経営者の質が悪いのかというと、これも同じ調査で決して低くない。
ただ、すごく気がかりなのはいろんな調査をみても、いわゆるやる気、熱意、これが低い。日本人の抑制した表現を割り引いて考える必要もあるが、いかにやる気を上げていくのかが大事。これまで日本経済はコストをカットする方向にいっていたが、これからは働く人の処遇改善を含めながらいわゆる生産性を上げていく、そして労働参加率も増やしていく方向へシフトしないといけない。それからもう一つは企業を興す人たちをしっかり支援をしていく。人材投資、教育も並行してしっかりと進めていくことで生産性を上げ、日本の成長をしっかりと実現していきたい。
しかし、今年は何といっても選挙の年だ。4月に統一地方選挙、7月には参議院選挙がある。参院選では非改選議席も含めて自民と公明で過半数を維持することが最低ラインだ。そのうえに目標を置きながら努力しなければならない。
よく衆参同日選挙があるかと聞かれるが、安倍総理は「頭の片隅にもない」と仰った。まさに今はそうなんだろうと思う。ただ衆議院は常に常在戦場と申し上げている。そういう心構えは失うことなく、しっかり取り組みたい。ご清聴ありがとうございました。