自民党選対委員長
森山 裕 氏
プロフィール
森山 裕
(もりやま・ひろし)
鹿児島4区選出。自民党選対委員長、森山派会長。1945年鹿児島県鹿屋市出身。県立日新高校(旧鹿児島県立鶴丸高校・夜間課程)卒業後、自営業(中古車販売会社経営)などを経験した後、75年に鹿児島市議初当選。鹿児島市議当選7回、九州市議会議長会会長を経て国政に転身。参院に1回、衆院に7回当選し、衆院予算委員会筆頭理事や農水大臣、党総務会長代行など要職を歴任した。前職の党国対委員長の在任期間は1534日で、歴代最長を数える。
自民党の国対委員長として最長の在任日数を数える党選対委員長で森山派会長の森山裕衆院議員が10月17日、福岡市のソラリア西鉄ホテル福岡で開かれた毎日・世論フォーラムの第346回例会で講演。内閣支持率のカギは経済対策で国民に安心してもらうこと、との認識を示した。また、昨秋の衆院選の「1票の格差」をめぐって「違憲状態」とする高裁判決が相次いだことを踏まえ、「(衆参両院の選挙を定める)憲法47条の改正を急ぐということが非常に大事なことだ」と訴えた。講演要旨は次の通り。
私の最終学歴は夜間高校卒業。昭和50年に鹿児島市議会議員の補欠選挙に出馬する機会を与えていただき、当選を果たすことができた。37歳の時、議長に就任させていただき、5回務めた。平成10年の参院選で当選することができたが、2期目となる平成16年2月、山中(貞則)先生が亡くなり、議論の結果、参議院から衆議院に変わることになった。
私は小泉改革の中で、郵政民営化だけは理解できなかった。地方は大変なことになってしまうと反対した。残念ながら郵政民営化法は通ってしまい、その後、離党勧告に従って離党した。安倍(晋三)政権に変わり、間もなく復党が許された。総裁室で安倍総裁とお目にかかると、安倍総裁は「お帰りなさい」と声をかけてくださった。本当にありがたく、自民党に戻ってまた政治活動ができることを非常にうれしく思ったことを思い出す。
政治というのは、本当に、現場のことがよくわかっていないといけない。我々の地方では、郵便局がなくなるなど考えられないことだった。最近になって郵便局に新しい役目を担ってもらおうという議論が始まり、(当時と状況が)少し変わってきた。各市町村の出先機関は郵便局に務めていただく時代を作っていくということになるのだろうと思う。郵政民営化改正の時に議論があった公社方式のような感じで議論が進んでいくのかなと思っている。
地方をどうするかという課題は、選挙と関係が深い。いろんな議論はあるが、やはり選挙制度を抜本的に変えていき、地方からも一定数の政治家を選べるということを考えると、憲法47条をどう変えていくかが大事だと思う。憲法改正を議論すると、すぐ9条の話ばかりになるが、そうではなく、急いでやらないといけない条項がたくさんあるということをしっかり認識して対応することが大事だ。選挙制度も、本当に人口だけで選んで良いのかという議論をさせていただき、地方からもしっかりと選べるようにすることも大事だし、衆院と参院の制度のあり方をしっかり考えて行くことも大事だと思う。
安倍、菅、岸田――この三内閣を通じ、1534日間に渡って国対委員長を務めた。いろいろな事があった。まず元号が平成から令和に変わり、与党の公明党の連立政権が20周年を迎えるということで、時代の大きな節目で国会運営に携わることができた。一番悩んだのは、やはり新型コロナ感染症の拡大。短期間で法律を仕上げなければならないという課題もあった。新型コロナウイルス感染症のための法律を(最初から)作るとすると、大変時間がかかる。このため、議論し、現行法にぶら下げて対応できるようにするという選択をさせていただいた。未知の病気だったので、厳しくした方がいいだろうということで、2類という仕分けがしてある。そろそろ収まってくるとすれば、5類への見直しは必要なことではないかなと思うが、緊急の場合では、やむを得ないことだったのではないかと思っている。
第204通常国会は菅内閣の時だった。菅さんは短い期間だったが、デジタルの関連法や地球温暖化の対策推進法、RCEPの経済連携協定など、非常に大事な法律を提出し、それらは成立した。この204国会は、私にとって非常に思いのある国会だ。国民投票法の法案を成立させる事ができたからだ。これは、憲法改正の時の手続き法といえば分かりやすいと思う。憲法改正の議論は、国民を巻き込んでしっかりと続けていけるようにすることが大事ではないかと思う。
(岸田内閣への)国民の支持率が非常に厳しいところにあることは承知しているが、国対委員長として、岸田総理が政調会長時代にもずっとコロナ対応について打ち合わせてきたことを考えると、極めて正直な方なので、どこかで国民の皆さんも本当の岸田さんの性格を理解していただけるようになると思うし、経済対策をしっかりやって国民の皆さんに安心してもらえるようにするのは、支持率を戻すための一番の課題ではないかなと思っている。
衆院選はいつですかと(皆さん)おっしゃるが、まだまだ任期がある。落ち着いてしっかりと政権運営を進めて行くことが今は大事なことだと思っている。