毎日・世論フォーラム
第281回
平成27年10月19日
衆院議員 自民党 北朝鮮による拉致問題対策本部長、初代国土強靱化担当相
古屋 圭司

テーマ
「誇りある日本を目指して - 北朝鮮拉致問題 国土強靱化と地方創生」

会場:ソラリア西鉄ホテル

北朝鮮・拉致問題:
調査前進へ独自制裁強化を

古屋 圭司 自民党
北朝鮮による拉致問題対策本部長、
初代国土強靱化担当相

古屋 圭司 氏

プロフィール

古屋 圭司
(ふるや けいじ)

1952年東京都出身、62歳。自民党岐阜県連会長。国家公安委員長、内閣府特命担当大臣、経済産業副大臣、衆議院文部科学委員長等を歴任。当選9回。祖父は衆院議員で元内務政務次官の古屋慶隆氏。伯父は自民党衆院議員で元自治大臣の古屋亨氏。14年、内閣改造に伴い自民党北朝鮮による拉致問題対策本部長に就任。今年2月、衆議院議員在職25年永年勤続表彰を受けた。近著に「“消防団基本法”を読み解く─地域防災力の充実強化のために」(近代消防社・共著)、「そうだったのか!!『国土強靭化』(PHP研究所)など。

 第281回例会は、元国家公安委員長で、自民党の古屋圭司拉致問題対策本部長が「誇りある日本をめざして~拉致問題と国土強靱化」と題して講演、会員120名が参加した。古屋氏は、北朝鮮による日本人拉致被害者らの再調査を巡る交渉について「人の往来の禁止などをやれば相当効く。いつやり、いつ解除するか。安倍首相が判断していく」と、独自制裁を強化して圧力をかけることが必要との認識を示した。北朝鮮の特別調査委員会の報告が遅れている現状について、「まだ成果はないが後退もしておらず、米国などと国際連携をしながら必ず解決させる」とも語った。講演要旨は次の通り。
 安倍晋三政権は3年でかなりの成果を挙げた。今後はアベノミクスの第2段に取り組むが、そのためには政治が安定して、1人の総理大臣がある程度長い間続ける必要がある。それは世界の例を見れば明らかだ。イギリスはサッチャー首相が11年やり、英国病を見事に克服した。ドイツのメルケル首相も11年目に入った。成果を上げている総理大臣を我々がしっかり支えることが、「誇りある日本」を再びよみがえらせることにつながると思う。
 北朝鮮拉致問題では、2006年に第1次安倍内閣ができたとき、初めて「拉致問題対策本部」という政府の公式な組織を作った。残念ながらそれ以来、毎年総理が代わり、完全に北朝鮮に足下を見られて拉致問題の解決も遠のいてしまった。12年に第2次安倍内閣が発足した後、総理は100カ国以上の首脳と会談して必ず拉致問題に言及し、国連にも働きかけた。その結果、北朝鮮は昨年7月に「再調査する」といった。その後は胸突き八丁の協議で、まだ具体的な成果は上がっていないが、あらゆるチャンネルを通じて圧力をかけている。
 アメリカに拉致された可能性が高い人がいるのをご存じだろうか。米国務省はまだ前向きに認めようとしないが、私たちは米上下両院の議員に「日本人被害者を含む拉致問題の決議をしてほしい」とロビー活動をやっている。もし決議が出て、米国民が拉致問題を広く知れば北朝鮮に対する圧力になる。日本は平和安全法制ができたが、自衛隊を北朝鮮に派遣して拉致被害者を救出することはできない。そういうことを考えると、国際連携が極めて大切になる。私たちは、金正恩第1書記に「拉致問題を解決しなければ北朝鮮の未来を描けない」と分からせるため、あらゆる方策を実行している。自民党の拉致問題対策本部は7月、制裁を強化するための13項目を作った。これはいつでも実行できる状態になっている。この問題は徹底的に頑張っていく。
 次は国土強靱化と地方再生について話したい。国土強靱化基本計画で具体例に挙げた一つが「クロス・ラミネーテド・ティンバー(CLT)」。これは木材の「直交集成板」と訳され、建設の構造材になる。これがなぜ強靱化なのか。国土の70%は山であり、森林が荒れると大規模災害が全国各地で発生する。この災害を防ぐために必要なのが間伐なんです。CLTは、間伐してもお金にならないため切らずに放置されるB、C級材を使う。極めて丈夫で、重さもコンクリートの4分の1。高圧力で固めて中に空気が存在しないので火災にも強い。木材は九州の重要産業だが疲弊している。CLTは森林の適切な管理と荒廃の防止、地域の産業おこしにつながる。新国立競技場でもCLTを可能な限り利用する計画にする。これは大変なPRだ。木造で5、6階建て、10階建ての構造物が可能になる。
 地方創生と国土強靱化の地方版は両輪と言える。全国1718市町村のうち、自前の税収だけで運営できる「財政力指数1以上」は59市町村だけ。財政力指数がいいのは、利潤を上げている企業の本社機能があるところだ。福岡にはかなり企業数がある。だが、残念ながら本当のグローバル企業はみんな東京にあり、そういった企業を誘致する必要がある。9月末に終わった通常国会で地方再生法の一部を改正し、東京23区にある企業が本社機能を地方に移した場合は税制を優遇するようにした。国家政策としてやっていくので知事、地方公共団体、経済界、みんなで取り組みましょう。
 最後に、麻生太郎副総理が総理大臣だった2009年の総選挙時の公約を紹介させてほしい。「働く意欲のある高齢者が生涯現役で働きやすい環境を整える」とある。これこそ1億総活躍社会の重要な柱だ。1億総活躍、地方創生、強靱化の地方版をトライアングルで実現すれば、必ず日本はもう一度よみがえる。高齢化社会は恐れるものじゃない。

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