自民党総務会長
二階 俊博 氏
プロフィール
二階 俊博
(にかい としひろ)
1939年2月生まれ、和歌山県出身の76歳。国会議員秘書を経て、父の故・俊太郎氏の後を継いで、83年の総選挙で当選、衆議院や党で運輸、観光、交通、農林水産など幅広い分野で常任委員長や部会長を務めている。14年9月、第二次安倍内閣で党総務会長に就任した。こ一貫して政府や党の要職を重ねており、実力者として評価が高い。
第274回例会は、自民党総務会長の二階俊博氏が「国土強靱化、海を渡る」と題し講演、会員200名が参加した。中国が主導して年内の設立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加問題を踏まえ、二階氏は「関係の深い至近距離にある大国を目の前にして次々に問題が起きている。対処していくには、常日ごろからの訪問がなければだめだ」と日中首脳会談の必要性を訴えた。二階氏は5月に3000人規模で訪中する計画を紹介し、「隣国とは仲よくする以外に方法はない」と述べた。講演要旨は次の通り。
国土強靱化を自分の政治的な一つのテーマとして取り組んできた。地震、津波、台風、洪水、土砂災害、火山噴火。日本はあらゆる災害のデパートみたい。被害をできるだけ少なくするために国土を強靱化して、あらかじめ対応しておくことが大事だ。
私は2000年、連立内閣で運輸相と北海道開発庁長官を兼務していて、有珠山噴火に直面した。ぜひ知っていていただきたいのは、噴火があって50人でも100人でも亡くなれば大騒動となるが、あの時は1週間くらい前からいろいろな危険を察知するような動きがあった。専門家の話を聞いていると爆発が来るなという感じがした。一番困るのは、避難勧告を出してみんなに避難してもらった場合、列車を止める、道路を止める。でも、爆発しないこともある。その時にどうするか。役人でも学者の責任でもない。政治の責任として私が謝れば済む。だから2日前に避難勧告を出した。1万8000人に体育館などへ避難してもらい、その後に爆発が起きた。おかげさまで人ひとりけがすることなく避難ができた。あらかじめ災害に対応することがいかに大事かということが言える。
東日本大震災の被災現場を拝見した時、我々自身が国をあげて国土強靱化に取り組んでいかなければいけないと改めて痛感した。その後、将来発生するだろう災害にどう対応するかということで昨年12月、国土強靱化基本法案を出した。また、直ちに南海トラフ地震、首都直下型地震への対策に関する法案を出し、3法案をほぼ同時に成立させることができた。世界中どこの国でも災害がいつ起こるかわからないが、災害が来ればどう対応するかという法律を作って準備している国は日本以外にはない。
私は5月23日から中国を訪問することにしている。誰に会うとかどんな計画とかはまだ何も決めていない。これは自由参加だから、おいでいただく方はおいでください。
この前、中国の習近平国家主席とお会いしてきた。習主席もこの国民交流が一番大事だと言い、大変重視していた。その他にも大使だとか、外務大臣経験者だとかともお会いし、日本との関係、特に国民交流を大切にして日中のいい時代を呼び起こさなければいけないとの気持ちが明らかに一致しているようだった。
ここから日本の持って行き方だ。5月23日からの訪中は、結果的には大変重要になっている。この前も別の会合で向こうの閣僚に会ったら、中国政府としても重視しているとはっきり言っていた。日本と交流断絶みたいな状態が続いているような中で、今ようやく話し合いができるようになってきた。これは多くの国民の大変なバックアップだと思う。
誰に頼まれたということもなく、私は5月に中国に3000人を連れて行く。いろいろ考えると気の重いことがあるが、誰かやらなければいけない。ここ数年間、国と国との交流が何にもないでしょう。政府間同士はやれてない。だけど、これだけ関係の深い、至近距離の大国を目の前にして、(中国が主導して設立を目指す)アジアインフラ投資銀行(AIIB)の問題も出てきた。この問題にかかわらず、次々に問題が起こっている。こういうことに日本が堂々と対処するためには、常日ごろからの訪問がなければ駄目じゃないですか。
今のところ3000人を募集しているが、習主席とも会って、ここまで話を詰めてきているのだから、精一杯の努力をしたい。九州の地から大いに激励していただきたい。隣国とは仲良くする以外に方法はない。理屈を言いたい人、主義主張のある人、歴史観に基づいてひと言加えておきたい人もいるが、遠くから吠えたってしょうがない。やはり出会って話をできる状態を作ること。
日本国はこれから外交をやって生きていかなければいけない国です。日本が孤立して、独立してやっておれるような国ではない。ならば諸外国と仲良くするために、まず中国、まず韓国、この周辺と仲良くしなければ、アメリカだって見ている。アメリカも、中国や韓国はアジアの国だからあなた方できちんと仲良くやってくださいよと言っている。それはアメリカに対する日本のステータスにも関係する。真剣に我々が取り組まなければいけない。単に一中国、一韓国との問題ではない。国際社会から今のままの状態でずっと過ごしていていいのかと心配されている。我々の取るべき態度や進むべき道はおのずから明らかになってくるのではないか。私は外交の専門家でも何でもなく、微力な国会議員ではあるが、私の及ぶ範囲において全力を尽くして取り組んでいきたい。みなさんのご協力をお願いし、今日この場にお呼びいただいたことを毎日新聞に改めて感謝を申し上げて終わらせていただきます。