毎日・世論フォーラム
第275回
平成27年4月20日
衆議院議員 平沢 勝栄

テーマ
「憲法改正や国際テロの動きなど安倍政権の当面の課題」

会場:西鉄グランドホテル

北朝鮮・拉致問題:
「再調査、前途は多難」

平沢 勝栄 衆議院議員
平沢 勝栄 氏

プロフィール

平沢 勝栄
(ひらさわ かつえい)

1945年9月、岐阜県出身の69歳。68年、東京大学法学部卒業と同時に警察庁入庁。後藤田正晴官房長官秘書官、警察庁少年課長、同保安課長、警視庁防犯部長、岡山県警本部長などを経て、95年12月退官。翌年10月の衆議院選挙(東京17区)に自民党公認で初当選、現在7期目。若いころ、福岡県警にも外事課長として勤務。イギリスでは、麻生渡前福岡県知事と机を並べた。マスコミでも、テレビ朝日、フジテレビ、TBSテレビなどにたびたび出演、切れ味のよいコメントの評価は高い。

 第275回例会は、自民党の平沢勝栄が元副内閣相が「憲法改正や国際テロの動きなど安倍政権の当面の課題」と題し講演した。北朝鮮による拉致被害者の再調査について、平沢氏は「日本は拉致被害者の情報を何も持っていない。拉致問題は安倍政権最大の課題で、一日も早く解決しなければならないが、前途は多難だ」と述べ、日朝政府間協議が難航しているとの見方を示した。また、拉致問題やイスラム過激派組織によるテロなどを念頭に「どの国も国益のために経済やテロ、軍事の情報を取っている。インテリジェンス(情報機関)のないことが日本にとってどれだけマイナスか」と指摘し、情報機関の必要性を強調した。講演要旨は次の通り。

 今日、一番話したいと思ったのはインテリジェンス(情報)の問題です。世界のどこの国でもインテリジェンス(情報)機関を持っており、国益のためにいろんな形で経済やテロ、軍事の情報を取っている。このインテリジェンスがないことが日本にとってどれだけマイナスになっていることか。
 英国の元首相、チャーチルの言葉に「インテリジェンスは3個師団に相当する」というのがあります。例えば、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国も含めどの国が入るのか、私が外務省から聞いた情報と大きく違っていた。他国は経済情報も含めてインテリジェンスを取る。今年、IS(イスラム過激派組織)のテロがありました。そして湯川遥さんと後藤健二さんは残念な結果になった。ISは機関誌で「我々はこれからも日本をやる」と言っている。いつどこでテロにやられるのかさっぱり分からないから、情報を取る努力をしなかったら大変です。そのためのインテリジェンスが日本にはない。
 日本は北朝鮮の拉致問題についても情報がまったくない。情報の真贋(しん・がん)を判断するのがインテリジェンスだが、それがないから、日本経済新聞社はガセネタに飛びついて、1面トップで「拉致のリストをもらって、近々帰ってくる」と書いた。ちなみに民主政権も北朝鮮が拉致被害者を帰してくるというガセネタをつかみ、それを信じて名古屋空港に飛行機2機を用意した。当時の藤村修官房長官から聞いたので間違いない。
 1977年9月に日本赤軍がダッカ事件を起こしました。日本赤軍の要求は、お金600万ドルと獄中の犯人9人の釈放だった。日本政府が6人を釈放したら、世界中から「日本は車だけでなくテロも輸出するのか」という非難を受けた。当時の福田赳夫首相は「人命は地球より重い」と言ったが、それで世界中から「人命より重いものは地球だ」と非難を受けた。地球が滅びて人命だけ残るわけがない。
 警察庁にテロ対策課があります。私はその前身のナンバー2になって世界中のインテリジェンスと接触しました。その時に言われたことは三つ。1番目は何で警察から来て、インテリジェンスが来ないのか。2番目は情報の世界はギブアンドテイクだけど、ギブ情報はあるか。3番目は情報の保全。命がけで取ってくる情報を守ることについてはどうなっているのかと。 国内には内閣情報調査室、公安調査庁、警察などいろんな機関があるが、外国で情報を取る機関はない。だから、しっかり情報を取り、その情報が正しいかを分析する機関を作らないと、これからの時代は厳しいのではないかなと思います。
 拉致の問題はしっかり解決しなければならない。関係者はご高齢ですから、みなさんが亡くなってから解決してもしょうがない。この問題は最終的には北朝鮮の体制が変わらないと駄目です。しかし、北朝鮮の体制が存続する中、問題解決のためには戦争をするわけにはいかないから話し合いしかない。でも、日本は拉致被害者が何人いるのか、どこにいるのか何も情報を持っていない。だから、拉致問題の解決は難しいのではないかなという気がします。
 拉致問題は安倍政権の最大の課題です。アベノミクスをさらに成功させなければならないという大きな課題もありますが、拉致問題を1日も早く解決しなければならない。まさにこれからの前途は多難です。手を緩めなくことなくやっていく必要がある。

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