毎日・世論フォーラム
第279回
平成27年9月15日
衆議院議員 亀井 静香

テーマ
「戦後70年~日本のゆくえ」

会場:西鉄グランドホテル

安保法案、時代錯誤な内容

亀井 静香 衆議院議員
亀井 静香 氏

プロフィール

亀井 静香
(かめやま しずか)

1936年生まれ、広島県出身78歳。60年東京大経済学部卒、62年警察庁入庁。79年の衆院選で、広島3区(現在は6区)から初出馬、初当選。衆院議員13期。運輸政務次官、党商工部会長、副幹事長等のあと、村山政権で運輸大臣、橋本政権で建設大臣を務めた。小渕内閣では自民党政務調査会長、森内閣でも再任される。05年、郵政民営化に反対し綿貫民輔元衆議院議長らと共に自民党を離党し『国民新党』を結党。09年鳩山政権で金融・郵政改革担当大臣に就任。12年国民新党を離党。

 第279回例会は、元金融担当相で無所属の亀井静香氏が「戦後70年~日本のゆくえ」と題し講演、会員150人が参加した。亀井氏は、政府・与党が今週中の成立を目指す安全保障関連法案について「時代錯誤な内容だ。地域紛争に大国が軍事介入する時代ではないのに、憲法解釈まで変えて自衛隊を派遣したいのか」と批判した。 政府は法案の必要性を巡り、中国の軍事力の台頭を強調しているが、亀井氏は「貿易関係などから日本は中国にとってなくてはならない国であり、国民の安全が脅かされることに結びつかない」と反論した。また、政府の経済政策について「実体経済ではなく、作られた株価だ。年金基金など国民の財産を吸い込んでばくちをやっている」と、経済の先行きに懸念を示した。講演要旨は次の通り。

 日本という山がその場で崩れていっている。「東京だけがよければいい」と、ふもとからシャベルで泥をすくい、山の上に積み上げて高くする。こんな政治がまかり通っている。地方は沈んでいるのに、政治は「弱肉強食は当たり前」。消費も減り、生産も減り、国民所得も減り、国がしぼんでいる。その中で一部の大企業と富裕層が目のくらむような利益を得て、格差が拡大しているのに誰も問題と思わない。
 日銀の黒田総裁がやっていることはなんなのか。中央銀行の仕事は円の価値を守ることなのに、量的・質的金融緩和でダムの水を放水し、市場に大量に資金供給した。だがその水は企業経営を助ける「工業用水」として皆さんに届いたのか。あるいは暮らしを潤す「生活用水」になったのか。介護や生活保護からどんどんカネが引き上げられている。一般のカネがない層から引き上げられているのが現実だ。それならば「農業用水」になったのか。冗談じゃない。米の値段は下がり、農家にカネは届いていない。ではカネはどこにあるのか。ばくち場、兜町に流れている。株価が高くなるのは当たり前の話だが、これは作られた株価なのです。皆さんが払う年金基金が兜町に際限なくつぎ込まれている。皆さんの財産がつぎ込まれている。
 個々の企業がモノを作り、売る。国民が買い、使う。この実体経済が伸び、全体に利益が及ぶ状況が実現しない限り安定的な経済の発展はありえない。経済のイロハのイです。でも兜町の株価は、国民の財産を吸い込んで、ばくちをやっているから実体経済と関係なく値を上げることができる。安倍晋三総理と話をすると「株がうまくいっている」という。だけど、私は「何を言っているんだ、ばくちじゃないか」と思う。アベノミクスがうまくいっているなんてとんでもない。残念ながらそれが日本の実態です。アベノミクスという「雰囲気」だけでなく、内需を拡大して実体経済をちゃんとする必要がある。バラ色の花火を上げるだけじゃダメ。華やかにしても下を照らさないといけない。
 安全保障について安倍政権は時代錯誤のことをやっている。世界は19、20世紀のように軍事力で国益を伸ばせる時代じゃない。米国でさえ世界の紛争地で軍事力を行使して全部失敗している。地域紛争に大国が軍事力で介入したってどうにもならない。そんな状況の中、憲法解釈まで変えて「地域に貢献する積極的平和主義だ」と自衛隊を派遣したいという。紛争地帯に自衛隊を派遣して何が起きるかというと、敵対勢力に攻撃されて自衛官が戦死するか、相手を殺すかだ。「いや、そんなことはない」というならば青年海外協力隊を出せばいい。
 政府は「安全保障戦略上の環境が変わった」と言う。中国が南沙諸島に基地を作り、軍事力を増していることを脅威だと言うが、それは「国民の安全が脅かされる」ことなのか。尖閣諸島が日本の領土であるのは間違いない。中国が我が物顔であのあたりをうろうろするのはけしからん話だが、戦後国是としてきた憲法解釈を変え、急いで対応しなければならないのか。あの岩山を領土にするため中国が日本を攻めることはありえない。中国にとって日本はなくてはならない国だから、戦争したところで中国に利益はない。それなのに、ありもしない脅威を仕立てて「抑止力を強化する」とそれに備えている。
 世界中で米国の戦争を手伝う法律を決めたら、米国が今まで以上に日本に力を貸してくれるのか。そんな義理や人情で国家は動かない。国益になるかならないかで判断するものだ。架空の議論で米国のご機嫌を一方的に取ろうとしている。本来ならば安保条約をもう一度検討し直して、日米がどう協力し足りない部分をどう手伝ってもらい、あるいは手伝えるのかを協議すべきだ。沖縄に新しい軍事基地を造らないといけないのか、それに変わる方法はないのかも考えないといけない。

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