公明党代表
山口 那津男 氏
プロフィール
山口 那津男
(やまぐち なつお)
1952年7月、茨城県出身の65歳。78年、東京大学法学部卒業。79年、司法試験合格。司法修習34期で同期に谷垣禎一・自民党元幹事長、千葉景子・元法務大臣らがいた。82年、東京弁護士会に弁護士登録。88年日本弁護士連合会調査室嘱託。現在は、党代表、同東京都本部顧問。 趣味は時間を見つけて読書すること。愛読書はホイットマンの『草の葉』と音楽鑑賞(中学時代はトロンボーンを演奏)。モットーは『至誠一貫』(真心を一筋に貫き通す)。
第303回例会は、公明党の山口那津男代表が「当面する重要政治課題」と題して講演、会員140人が参加した。山口氏は、2018年度税制改正で、所得税改革で増税となる年収水準を850万円超とすることで自民、公明両党が合意したことについて「当初は『800万円超でやむを得ない』という空気もあったが、公明党から異論が相次ぎ、都市部のサラリーマンに配慮した」と述べ、存在感をアピールした。また、特別国会で野党の質問時間を削減し、与党の時間を増やしたことに関し「官邸主導、安倍1強と言われる中で自民党にも公明党にも言い分があり、議論したいテーマがある」と正当性を主張。「与党は選挙で訴えた北朝鮮問題や消費税でかなり突っ込んだ(国会の)議論ができた」と強調した。講演要旨は次の通り。
冬の訪れと共に政治はこれからいよいよ明年に向けての蓄えというか、仕込みを仕上げていく時期になったと思う。この総選挙を挟んで、北朝鮮の問題とそれに関係して我が党としてもロシア、あるいは中国あるいは韓国と相次いで訪問してそれぞれの要人と会談を重ねてきた。それらの報告も含めて、今日は当面する重要政治課題、来年を展望しながら話したい。
この特別国会と並行して、政府与党では税制や予算の議論をして新しい経済政策のパッケージというのをまとめさせていただいた。その中で一つ、私立高校生の授業料の実質無償化、これを公明党は今回の選挙で掲げた。自民党は掲げなかった。選挙が終わってから「政権合意」というのを自公で結ぶが、そのときにも教育負担の軽減の文言の中に、私立高校生の授業料の実質無償化は明記されていなかった。安倍総理とお会いするたびごとに私は、幼児教育と高等教育の無償化を進めるのは大事だがその間の中等教育、つまり高校生もところも抜けてはならないと訴えた。消費税(10%への引き上げ)が実行される予定が2019年10月。フルで税収が完結するのが2020年からということになるから、2020年に全て実施する。これは閣議決定されたから政府が責任を負った上で、実行することになると確信している。
このパッケージに基づいて来年度予算、あるいは今年度の補正予算等が作られるが、先立って税制改正の議論がなされている。特に私が触れたいのは、所得税と中小企業に関する税金のところだ。所得税については税収が増えるように当初は年収800万円を超える人に税負担と少し増やさせていただこうということで議論が始まった。しかし私を始め公明党は都市部の議員が多い。党内で異論が相次いだ。年収800万は決して高額所得者で悠々と生活しているわけではない。都市部では生活のコストも結構かかる。そこで最終的には年収850万円を超える人たちに負担をお願いすると言うことで決着を見た。
中小企業の税制についても、相続税や贈与税が高すぎておいそれと後継者に譲れないとう悩みがある。ここは思い切ってこの税制を変えろということを特別国会の代表質問で私自身が強く迫った。もう一つ、中小企業のために設備投資の促進しようと。機械や設備を新しく投資した場合には、固定資産税を3年間免除できるような仕組みを作った。合わせて補助金を考えている。固定資産税免除と合わせて出来るようにした。
これから当面する、将来どういうところが焦点になるか。来年の大きな政治的な動きを見たときに、一つは自民党の総裁選というのがある。しかしこれは自民党自身がお決めになることだから、私はここでものは言わないことにする。もう一つは、外交テーマがたくさん出てくる。北朝鮮の問題は引き続きということになるし、また日中関係も大きな山を迎えていると思う。
公明党はこれまで中国と独自の交流を重ねてきた、この今のタイミングで中国がセットしたそういう意見交換の機会は大切にすべきだろうということでOKして行った。中国に行くときは、我々はいつも韓国のことを気にする。韓国は文在寅政権に変わってまだ接触がなかった。やはりここで中国に行く前に韓国を訪問して文在寅政権、あるいは国会の要人と意思疎通を図る必要があると、急きょ韓国側に打診して、大統領側も「是非お逢いしたい」と急きょ決まった。北朝鮮問題について、我々は、政府と同様に今は圧力を高めていくことが重要で、日韓、日韓米、そして国際社会との連携が大切だと思っているという趣旨の話をした。大統領からはこれまでは「対話による平和的解決」ばかりを強調していた時期があったが、やはり相次ぐ各国の首脳会談を重ねる中で、私と会ったときは、前置きは「平和的解決」と言ったが、韓国は今、もっとも強い圧迫と制裁を課していると。これ以上北朝鮮が挑発的行動を行えばさらに圧迫を強めて行きたいと。そういう点で日本と認識を一致させる必要があると明言した。
この韓国訪問を経て、中国に11月30日から12月3日まで行った。日本からは5つの政党が参加した。自公が共に同席しながら中国側と議論する場もあったが、汪洋さんという副首相でこのたび常務委員に昇格した方がいる。この汪洋さんと会談したのは公明党が単独だった。45分程度会談をしたが、日中関係改善への意欲というか姿勢がはっきり見て取れるそういう会談の内容だった。やはり国交正常化45周年の節目であり、また来年は日中平和友好条約締結40年の節目、ここを生かしたいということがはっきりと表れていた。この対話会の本番では習近平国家主席が各国代表と握手しながら迎え入れて自らがスピーチをやり、そして会議が始まった。ここでは14人の代表のみが習近平国家主席と握手する機会を与えられた。その中で安倍総理の親書をお渡しして言葉のやりとりをしたのは私のみだ。私からは北朝鮮問題など地域の課題について是非協力願いたいと申し上げ、また主席の訪日を望んでいますと、日本の国民は主席の訪日を受け入れますという趣旨のことを申し上げた。主席からは「ようこそいらっしゃいました。歓迎します」と笑みをたたえた言葉があった。
日ロ関係も来年、新たな展開がある。いろんな幅広い協力を望んでいる。北方領土の島民の墓参、自由往来、これをまず実現した。今度は共同経済活動。今枠組み、実施の方法を検討し、具体的なプロジェクトというものが見えてきた。これが実行できるように進めていくのが来年の課題だ。容易ではないけれども、日本の政権が安定し、そして自公が持ち味を生かし合いながら内外の課題を乗り越えて、そういう役目を担っていきたいと思う。公明党は政権の中で、自民党にはない持ち味があると自覚している。そうしたものが国民にとっていい結果として受け止められるように独自の政策発信を進めていく決意だ。