毎日・世論フォーラム
第301回
平成29年10月31日
元衆議院議員 若狭 勝

テーマ
「政治家として、法律家として見た
これからの日本」

会場:ソラリア西鉄ホテル

希望・若狭氏、衆院選振り返る

若狭 勝 元衆議院議員
若狭 勝 氏

プロフィール

若狭 勝
(わかさ まさる)

昭和31年東京都葛飾区生まれ。60歳。昭和55年中央大学法学部卒、同年司法試験に合格。昭和58年検察官任官。特捜部時代はゼネコン汚職事件などを捜査、日歯連事件捜査では特捜部班長として携わった。平成26年の衆議院選挙で自民党より比例東京ブロックより初当選を決めた。平成29年8月 国政新党「日本ファーストの会」を設立。今年10月の衆議院総選で新党「希望の党」で東京10区で出馬するも落選。選挙後、政界からの引退を表明した。

 第301回例会は、希望の党の若狭勝氏が「政治家として、法律家としてみたこれからの日本」と題し講演、会員140人が参加した。若狭氏は、小池百合子代表(東京都知事)と民進党の前原誠司氏について「ボタンの掛け違いがあった。前原氏には『小池氏が衆院選に出馬する』という思い込みがあった」と振り返った。また小池氏の出馬について「次の次(の衆院選)だ」とした自身の発言は、希望への期待が急速にしぼむのを避けるためだったと説明。ただ、小池氏からは「そういうことを言っちゃダメ」とたしなめられたという。講演要旨は次の通り。

 本当は当選して、この場に立たせていただくつもりだったんですが、諸般の状況で選挙に当選できなかった。今日は折角の時間を頂きましたので、私のここ3年間ぐらいにわたって国会議員をやっていた。その経験をふまえて、あるいは法律家として感じたことをお話させていただきたい。
 まず希望の党についてはみなさんご案内の通りですが、もともと二大政党制を目指していた。保守改革の二大政党制。二大政党制と聞くと、保守と革新をイメージしてしまう人も多いので、そこで抵抗感も出てくる。私が描いているのは、自民党、自公の今の保守に対する、改革保守という二大政党制。本来二つが自分の政策を競争し合い、有権者に誠実に説明する。競争意識を持たせることによって、はじめて真ん中に座っている有権者の人が判断できる。それがまさしく国民主権のもとにおける有権者の判断だと思う。その二大政党制を希望の党で立ち上げる時に描いていた。
 自民党の政治はしがらみ政治だ。自民党はいろんな政策を出していて、結構アイデアに富んでいる。ところが、いざ実行しようとなると厚い壁がたちはだかる。利権だったり、既得権であったり、各省庁の思惑だったり、族議員の動きだったりで、良い政策が全部骨抜きになったり、後退してしまう。これがしがらみ構造。自民党に対峙するのが、ちゃんとした改革保守の役割だということがまずある。
 今回の希望の党の失速について、若干話をさせていただきたい。私も非常に忸怩たるおもいがある。たとえば排除発言とかいう話。小池代表は政党は基本的な考え方が一致する人がメンバーにならなければいけないという軸足があるが、表現として排除するという言葉に出てしまった。考え方は良いが、表現の仕方、国民の多くの人の見え方としてどうだったのかというところが反省材料だなと思っている。
 私のことで「次の次」という発言をしたことがある。NHKの討論で。希望の党の政権交代は「次の次」と言ったが「若狭は本当に政治がわかっていない」「政治の未熟さだ」という人がいた。実はあれはかなり戦略的に言った言葉だ。私は特捜部の検事としてずっと政治を見てきた。結局は前原さんと小池さんの話の中で、前原さん自身は小池さんが衆議院選挙に立候補するという思い込みがあったらしい。それで前原さんがそのことをいろんなところで言っているから、国民の多くの人の期待感が高まっていった。実は私は小池さんは都知事の仕事をなげだすわけにはいかないので、最初から最後まで今回の衆議院選挙に出ないと思っていた。ところが、期待が高まっていて、公示日前日ぐらいに小池さんが立候補しないということが確定した段階で期待が一気にしぼんでしまう。しぼんだ状態で公示日を迎えて選挙戦を戦うのはかなりリスキーだなという思いがあって、ある程度、地ならしというか、トーンダウンさせる必要があるということで、小池さんは今回の選挙には出ないというような意味も込めて、次の次というようなことを言った。
 国会議員は国民の命を本当に守り抜くためにどうしたらいいいかという考え方が弱い。国民の命を守り抜けるという政治の原点をつらぬけるような、きちんと主張し会える政党が大事だと思っている。これから皆さんにはそういう観点で、自民党のいろんな弱点を追求できるきちんとした政党がなければいけないということを思っていただきたい。

【山本修司編集局長との対談】
【Q】まるごと民進が希望に入れば、政権交代もありえるのではと、自民党も政権交代にひやひやしていた。小池氏が出ればもっと票が集まるかも知れなかった。どっちも可能性はなかった?
【A】私の中の方程式では、政権交代が結果的にでも可能になるとしたら、民進党が全員合流、受け入れるか、小池さんが衆議院に出るか、その二つの条件のどちらかが満たされないと難しい。しかし、一番目の条件は基本的な政策の考え方が一致しない人までも全員一つの党になるというのは、国民に対してわかりにくくなって、選挙は勝つかも知れないけど、私は考え方が違う。あと、小池さんが衆議院選に出るということだが、はなから出ないと思っていたから、満たされないことになる。そうすると、二つの条件を満たした形での政権交代可能な議席数獲得ということについては、難しい。他のさきほどいった二大政党制をうたって、地道に確実に手堅く訴えていくことかなと思った。
【Q】自民党との合流について小池が一度も否定しなかった。首班指名で石破を指名とも出ていたが。
【A】ちかくでみていて、小池さんは自民党とはかなり一線を画している感じがした。自民党と連立を組む気配は感じていなかった。
【Q】なぜ否定しなかった?
【A】具体的なアドバイスをしたことはない。おそらくもともと都知事選挙の時に、小池さんは自民党の人からも支持された、票を入れてもらっている。だから、幅広い層、政党の人から支持されるためにはよいだろうかという思いが小池さんの中にあった可能性はある。
【Q】二人のしこりは?
【A】今現在しこりはまったくない、今さっきも小池さんから電話をいただいた。今、福岡にいますよと。
【Q】政治から退くといったが、法律顧問の予定は?
【A】希望の党を支援することはあるにせよ、どういう形で支援するかというのは青写真は描けない状態だ。

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