毎日・世論フォーラム
第259回
平成25年11月21日
前衆議院議員 古賀 誠

テーマ
「33年政治活動を振り返って」

会場:西鉄グランドホテル

秘密保護法、論議足りぬ

古賀 誠 前衆議院議員
古賀 誠 氏

プロフィール

古賀 誠
(こが まこと)

1940年8月、福岡県出身の73歳。65年3月、日本大学商学部卒業。参議院議員秘書などを務めたあと、80年、衆議院議員総選挙で福岡7区から出馬、初当選。39歳だった。以来連続10回当選。運輸大臣、自民党幹事長、自民党選挙対策本部長代理などを努める。12年の衆議院選挙で、不出馬を表明し議員を引退した。

 11月21日、福岡市に西鉄グランドホテルで、自民党の古賀誠元幹事長が「33年政治活動を振り返って」と題して講演、会員150名が参加した。
 古賀氏は、特定秘密保護法案について「いたずらに国民の不安をあおっており急ぐ必要はない」と述べ、慎重な国会審議を求めた。「役所や官僚が隠す情報にどう対処するかが本来の趣旨なのに、議論が足りていない」と強調。「数の力、自分の思想で、国の将来を決めるやり方は、国民の期待に応えるものではない」と語り、安倍政権をけん制した。講演要旨は次の通り。

 昨年の衆院選から1年になろうとしている。アベノミクスだけを掲げた選挙で、実績も評価もないのに大勝した。しかし、為替、株に影響を与え、その後の参院選でも勝利し、衆参ともに与党は過半数を超えた。心配なのは政党政治がなし崩し的に失われていないかということだ。首相が望む法律だから提案するということになっていないか。与党内でしっかりした議論を民主的にやることが大事なのに、それがなくなっていないか。
 自民党内で議論が進まず、首相の考えだけが一番大事となり、中身は二の次。小泉首相からこうしたことが定着したようだ。衆参の選挙で与党が大きな力を持つようになったが、代わる政党がない状態が続けば、また先の大戦のような大きな間違いをするのではという危惧すら持つ。首相自身の思想で、国の将来を導くことは国民のためにならない。
 今国会で議論されている特定秘密保護法案、集団的自衛権をもたらす憲法改正など、重要課題は多い。憲法改正の声は静かになったが、96条改正が近々の問題ではないからだろう。トップは自分の思想と異なっても、多くの国民の声を聞かなければならない。そのことに気付いたのかもしれない。
 特定秘密保護法案も急ぐ必要はない。この法案を巡る議論は本来の趣旨と異なっていると思う。官僚が外に出してはならない情報を抹消し、封印することが問題なのであり、その視点で議論しなければならないはずだ。小野寺防衛相が、防衛機密の文書を廃棄してはならないと通達を出したが、これが本来のあり方だ。
 小泉さんの発言で、原発がまた注目されるようになったが、福島原発の事故は天変地異によるものだから、東京電力の責任は限定的なはずだ。それなのに、ハンドリングを間違えたとして東電のせいにした。財務省は財源的観点で東電のせいにし、政府も東電のせいにする方が国民から拍手が上がるのでそうした。全く筋違いだ。東電をつぶすべきだという声もあるが、福島原発の後処理を誰がやるのか。ポピュリズムに走ってはならない。
 非常に厳しい経済状況の中で、アベノミクスは予測以上の数字を出すようになった。しかし、「2本目の矢」の財政出動は簡単ではない。だから、財政再建と併せ消費税が引き上げられることになった。8%はむしろ遅いぐらいで、小泉政権時にやるべきだった。2015年の10%も約束になっており、これも今後議論されるが、経済状況を見ながら増税するかどうかを決めることは当然だ。軽減税率についても下手に対応すると、公明との連立が崩壊する危機を招くので、慎重にやらなければならない。こうして考えると、「2本目の矢」の財政出動は難しく、あまり大きな期待はできない。限界があると思うからだ。「3本目の矢」の成長戦略になると、全く信頼できない。大企業だけが喜ぶような戦略ではだめで、中小零細企業が元気になるようにしないといけない。今のままの戦略ではだめだ。
 「ポスト安倍」をどうするかを私の政治活動の集大成と考えており、保守本流から選ぶべきだと考えている。宏池会に、林農相、岸田外相など人材はいる。私自身の勉強会もあり、野田聖子氏らが参加している。野田氏にはもっと表に出ろと言っている。

年度別アーカイブフォーラム