公明党代表
山口 那津男 氏
プロフィール
山口 那津男
(やまぐち なつお)
1952年7月、茨城県出身の60歳。78年東京大学法学部卒業。90年。旧東京10区から公明党公認で衆議院総選挙に初出馬、初当選。党では参院国会対策委員長、同政策審議会長、同政務調査会長など幅広い分野で活動、09年9月、太田昭宏前代表の後を受けて、代表に就任した。とくに歴史のある中国との友好関係発展に務めている。今年1月、中国共産党トップ就任後の習近平総書記(現国家主席)に日本人としてはじめて会見した。「至誠一貫」。水戸一校の校是を大切にしている。
第253回例会は、公明党山口那津男代表が「今後日本がとるべき進路」をテーマに講演した。山口代表は、改憲の争点化に否定的な立場を強調した。その上で「連立の目的以外のことで意見の違いがあったとしても、国民の期待に忠実に応えていきたい」。改憲で対立しても連立は維持するとの宣言だった。講演要旨は次の通り。
自民と連立政権を組む際、4年の任期で何をするかを話し合った。憲法改正は重要な課題の一つだが、まだ結論は見えない。自民は改憲を進めたいという立場だが、改憲は国会のテーマで行政府のテーマではない。このため、連立合意の中には含めないことにした。国会のテーマは与野党が議論しなければならない。
連立合意の際の優先順位は「震災復興」「日本経済の再生」「外交を立て直す」だった。外交では特に米軍普天間飛行場を巡って沖縄の人たちの信頼を揺らがせ、日米関係にも影響した。経済については、衆院解散時から株高円安が始まった。いかに前政権に対する閉塞感が大きかったかを示すものだ。だが、これは新政権への期待感に過ぎない。期待を裏付ける政策を実施しなければならない。
アベノミクスは金融政策、財政政策、成長戦略の3本の矢から成る。金融政策では、日銀が大胆な金融緩和に踏み切った。市場は期待以上の驚きとなった。それがさらに株高円安につながった。次は政府の政策が重要になる。需要を生み出さなければならない。大型補正予算を組み、老朽化したインフラの整備など緊急需要を生み出した。更に本予算は15カ月を展望して編成した。
成長戦略は、当面の需要だけでなく、経済全体が発展するためのものでなければならない。株高円安だけでなく、賃金が上がり、消費が増え、輸出を増やす。そこからデフレ脱却ができる。民間の力をいかに引き出すかが重要だ。本物の軌道に乗せたい。
外交立て直しでは日米関係の再構築が重要で、安倍首相は日米首脳会談で同盟関係の確認、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の共同声明を出した。例外なき関税撤廃はない。関係国交渉では、(コメなど)重要品目をいかに守るかが大切だ。国益を最大化するためのタフな交渉となるだろう。
また、周辺国とのあつれき、特に尖閣諸島問題を抱えた中国との関係をどうするかも重要だ。まずは政治討論、首脳会議が必要となる。私は、中国の国家主席となった習近平さんと会談したが、私の「首脳会談を」との呼びかけに、「ハイレベルの交渉は重要。真剣に検討する」と語った。中国とは戦略的互恵関係を築く必要がある。対話によってこの外交上の問題をコントロールしなければならない。習氏は私との会談の直後、従来の主張だけでなく「周辺諸国との関係を傷つけてはならない」とも語った。
安倍首相はロシア、中東、トルコ歴訪を検討している。ロシアには日本の経済界の人たちも同行して関係改善を図る予定だ。
参院選は7月21日が投票日だろう。参院選では、与党が過半数を取り、政権を安定させなければならない。自民と公明は持ち味が違うが、それだけに幅広いニーズを受け止めることができる。意見の違いがあったとしても、国民の期待に応えていかなければならない。選挙後、連立が変わることを心配する人もいるが、今の形がベターだと考えている。