みんなの党代表
渡辺 喜美 氏
プロフィール
渡辺 喜美
(わたなべ よしみ)
1952年3月、栃木県出身の61歳。早稲田大学政経学部卒。83年父親の美智雄氏の死去に伴い、栃木3区から衆議院総選挙に自民党公認で出馬、初当選した。09年1月、みんなの党を結党。愛称はヨッシー。決断力、度胸、歯切れの良さは父親譲りと誇り、いつもミッチー(父親の愛称)ならどう考えるか、が習い性になっている。
第254回例会はみんなの党の渡辺喜美代表が講演し、安倍首相の最近の政権運営について「我々に近くなってきている。気がついたら維新の方が自民党よりも『右』に行ってしまった」と述べ、維新よりも安倍政権の方が政治的、政策的距離が縮まってきているとの認識を示した。安倍政権が大胆な金融緩和策やTPP交渉参加などみんなの党と重なる政策を実施していることを指摘。「安倍内閣が(参院)選挙前に『(消費)増税凍結』と言っちゃうと非常に我々は困る。」と語った。講演要旨は次の通り。
アベノミクスの3本の矢で効果が出ているのはまだ金融緩和だけだ。実は物価安定目標を唱えていたのは、みんなの党。それを安倍さんはそっくりそのまま持って行った。ぱくるなら、中途半端でなく徹底的にぱくってほしい。今のままで行くと、金融緩和の一時的な効果しかないので、2本目の矢の財政出動をしないといけないが、公共事業をやろうとしても今はなかなか増やせない。これでは3本目の矢の成長戦略もうまくいくかどうか。霞ヶ関に投資をさせると誰も責任を取らないという点もある。民間では考えられないことだが、これがアベノミクスの危ういところでもある。
内閣支持率、政党支持率から、自民はこのままだと参院選で間違いなく勝つだろうが、そうなると、自民は先祖返りする恐れがある。お世話になった業界団体への恩返しをするというのが、昔ながらの政治のやり方で、それが右肩下がりにもつながっていったが、その心配もある。
この20年間、日本の国家経営のあり方はあまりにお粗末だった。バブル経済の後片付けをしないといけないのに、政治改革が始まり、中選挙区制が小選挙区制になった。何をするか、日本をどの方向へ持って行くかという政党としての魂を持つことが大切なのに、出ては消える政党を助長することになった。何をするかを失った政治家は、歌を忘れたカナリヤだ。官僚機構は相変わらず冷戦時代の状況で動いている。縦割り、年功序列。これではどうしようもない。政党、官僚機構をまずは何とかしなければならない。みんなの党を作ったのは、こうした理由からでもある。
日本維新の会ができた時、合流を呼びかけられたが、その時から「まずいかな」と思っていた。石原慎太郎さんは考え方が相当右寄りで、石原さんトップの政党がどんなものかは私には容易に想像がついたので「合流には至らない」と思った。それが、ここに来て予想は当たったと思う。
それと(従軍慰安婦発言などをした)橋下徹さんは、どうも建前論にシフトしたようだ。日本は日米同盟が根幹にあるため、言いたいことをこらえながらやってきた。右寄りの人たちにはそれがまたがまんならないのだろう。安倍さんも村山談話の見直しなどをやるつもりだったが、尖閣諸島周辺に中国船が出没している現状を考えると、日米同盟がおかしくなったら間違いなく国益に反する。建前でなく、本音を言って、本音の行動を安倍さん、石原さんはするつもりだったのだろうが、外国と間では摩擦を生む。橋下氏も誤解を招いたので建前論に舵を切ったのだろう。
安倍さんの周辺では、消費税凍結を言い始めてきた。アベノミクスで株価は上がったが、給与上昇がまだ追いついていないので、消費増税をやったら消費が進まなくなる。増税の前にやるべきことはデフレ脱却だと私は安倍さんに言ってきた。財務省は反対するだろうが、安倍さんは凍結するかもしれない。参院選前に安倍さんが消費増税凍結を言い出すと、われわれとしては、政党の差別化が更にできなくなり困ったことになるのだが。
TPPについては、日本の農業は世界に冠たる産業になれる力を持っているのに、米の特別枠を作ろうとしている。そんなことをしたら減反が進むだけだ。統制経済が日本の農業をだめにしたのに、自民が参院選でぼろ勝ちすると、これも先祖返りする恐れがある。 原発再稼働が今議論されているが、私は電力の小売り自由化をすればいいと思っている。オイルショックの時、われわれ日本人はエネルギー効率を高める努力をした。原油が安くなって一気に冷めたが、電力市場を作って自由化すれば、エネルギー効率をまた高めることにもつながると考えている。