毎日・世論フォーラム
第252回
平成25年3月13日
内閣官房参与 浜田 宏一

テーマ
「アベノミクスと日本経済の復活」

会場:ホテルオークラ福岡

安倍首相の金融緩和策を評価

浜田 宏一 内閣官房参与
浜田 宏一 氏

プロフィール

浜田 宏一
(はまだ こういち)

1936年1月、神奈川県出身77歳。東京大学法学部・経済学部卒。経済学者、米エール大学経済成長センター名誉教授。東大とエール大で経済学修士、エール大で経済学博士取得。東大経済学部教授、エール大経済学部教授、理論・計量経済学会(現日本経済学会)会長、内閣府経済社会総合研究所長、中央大学大学院総合政策研究科特任教授などを歴任。瑞宝重光章受章。12年12月、第二次安倍内閣で内閣官房参与に就任。近著に『アメリカは日本経済の復活を知っている』(講談社)など。

 252回例会は「週刊エコノミスト『ザ・九州」』発行記念特別講演として、内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授が「アベノミクスと日本経済の復活」と題して講演。これまでの日銀の金融政策に対し、「日本経済をデフレと円高にもっていった15年の歴史は非常に残念」と批判。安倍首相が掲げる経済政策の「三本の矢」に関して「現在の円安株高をみると、第一の矢である金融政策が効いている」と述べ、2%の物価安定目標の導入など安倍首相の主導で実現した金融緩和策を評価した。また、「我々学者のアイデアが生きてきた」とも述べた。政府が国会に提示している日銀の次期正副総裁候補3人も「ちゃんとデフレファイターでやってくれる布陣で、何ら心配していない」と評価した。講講演要旨は次の通り。

 「アベノミクス」の名付け親は中川秀直・元自民党幹事長です。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の「3本の矢」でデフレ、円高を解消しようというものです。私が正しいと思っていることを、衆院議員の山本幸三さん(福岡10区)らが安倍首相に説いていったのです。
 今日、羽田空港に行く途中、タクシーの運転手さんに景気について聞くと「動き出したみたいですね」と言っていた。アベノミクスで株価が上昇、円安になってきましたが、実感としてはどうなのかという思いがありましたが、これも3本の矢が動き出したことの証しだと思います。物価と株価が上がっただけでは駄目で、これが景気、消費、生産にどう響いていくかが重要です。これが動き出せば、財政出動の2の矢はいらないほどですから。
 しかし、ゼロ金利のため、経済がなかなか動かないとなると財政出動は必要です。質的な財政支出のあり方を変えないといけない。景気浮揚にどう使うか、選択的に使っていかないといけません。株価上昇、円安で輸出産業が活況となり、収益が増えればその何分の一かは税金として帰ってくるので、財政状態も良くなります。
 そして、最も重要なのが成長戦略です。生産要素を増やすため、外国人労働者を選択的に入れて、日本人と競争させることも必要でしょう。日本では、優秀な輸入労働力をうまく使うことがあまりありません。 米国は外国人労働者を選択的に導入することを既に始めていますが、非常にフェアな社会だと思います。日本はもっと競争の波にさらされた方がいい。3Kと呼ばれる職場なら、あまり教育されていない労働力も入れていけばいいのです。日本人だけですべてをやるのはどうでしょうか。 潜在的な成長戦力を考えると、質のいい労働力が必要です。自分たちで考えるという教育が日本ではこれまであまりされませんでした。技術をまねることで日本は発展しましたが、もう外国のまねをするだけでは進歩はありません。
 TPPについては、反対する人もいますが、農業も企業として成功できるようにすべきです。「三ちゃん農業」を守るようなことはしてはいけません。反対している人たちを説得し、自由貿易の良い面を持ってこないといけません。

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