毎日・世論フォーラム
第257回
平成25年9月19日
文部科学大臣 下村 博文

テーマ
「日本の教育再生への取り組み」

会場:西鉄グランドホテル

欧州経済危機の影響を分析

下村 博文 文部科学大臣
下村 博文 氏

プロフィール

下村 博文
(しもむら はくぶん)

1954年5月群馬県生まれ59歳。早稲田大学雄弁会に所属。96年、衆議院総選挙に出馬し初当選、現在6期目。内閣官房副長官、文部科学大臣政務官、法務大臣政務官を歴任。12年、文部科学大臣に就任。東京オリンピック・パラリンピック担当大臣を兼務。あしなが育英会の元副会長。

 第257回例会は、下村博文・文部科学大臣が「日本の教育再生への取り組み」と題し講演した。下村氏は「2020年の東京五輪開催が決まり、私はその担当相にもなった。五輪開催は7年後だが、アベノミクスによる経済回復で真に活力あるものにしたい。」と述べ、教育についても「大胆な改革をしたい」と持論を披露した。講演要旨は次の通り。

 五輪は、東京だけの問題ではないし、ただのスポーツの、平和の祭典でもない。転換期になるようなものにしたい。文化・芸術立国として、伝統文化、自然、おもてなしなど日本の感性あふれるものにもしたい。スポーツだけでなく、アート関連の人たちにも日本に来てもらい、いろんな提案をしてもらって、観光立国、経済発展につなげたい。
 五輪招致の裏話を言うと、高円宮妃久子さまの活躍は大変なものだった。宮内庁は皇室を政治利用しない、政治にはかかわらない、勝負事にかかわらないとしていたが、アルゼンチンの隣国・チリで日本移民の行事をするのでそれに来ていただき、アルゼンチンに寄ってもらうという形を取った。私はお付きでそばにいさせていただいたが、妃殿下はロビーを歩いてIOCメンバーに声をかけていただいた。IOCメンバーの1割以上は王族で、妃殿下自身が人脈をお持ちのうえ、英語、スペイン語をお話しできるため、誰とでも対話された。プレゼンはかなわなかったが、震災復興支援のお礼を言っていただいた。妃殿下も「自分にこんなに外交感覚があるなんて」と驚いておられた。皇室の政治利用はできないが、五輪に関しては政治ごとではないということを宮内庁には認めてほしい。
 今後7年間は、日本は活性化していくが、2020年を新たなスタートの年にしたい。東京一極集中を加速させるのではない五輪にしたい。そのためには、防災、減災、震災復興もしなければならない。福島の汚染水の話がIOCから出され、首相から「コントロール」という言葉が出て、470億円をかけて国が対応すると言った。私は(1)災害に強いまちづくり(2)震災、原発事故からの復興を世界に発信(3)人材育成(4)環境に優しい、省エネな社会(5)文化芸術あふれる社会(6)新たなフロンティアを創造(7)幸福を実感できる社会(8)若者たちボランティアがつくる参加型社会――というコンセプトに五輪を位置づけたい。 東京五輪では金メダルを25~30個、メダル獲得総数70~80を目指す。そのためにアスリート育成も進める。各地に五輪担当室をつくり、オールジャパンで活性化させていく。そして、日本を誇りある国にする。
 日本を立て直す根本は教育だと思っている。大胆な教育改革をしていきたい。日本は1人1人の教育力が落ちている。今、自分はだめな人間だと思う高校生が今84%いる。3年前は63%で、1980年代からの調査だが当初は30%だった。自己否定の高校生が増えている。教育によって自分は有為で、世の中、家族に貢献し、周りも幸せを感じていると思える人材をつくりたい。具体的には(1)土曜授業の導入支援(2)少人数教育を進めるための体制強化(3)社会人の学び直し支援(4)誰でも学べる環境整備……などだ。更に英語力強化もしたい。五輪プレゼンでもアスリートたちは臆することなく英語で話していたが、世界共通の大学入試である国際バカロレアに2018年までに日本語の試験を作ってもらうことにした。五輪の日本開催により、目標が設定しやすくなった。7年間は戦略的にも計画が立てやすい。五輪をきっかけに、日本に生まれて良かったと感じられる国にしたい。

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