自民党幹事長代行、衆院議員
野田 聖子 氏
プロフィール
野田 聖子
(のだ・せいこ)
1960年9月、北九州市生まれ。上智大卒業後、帝国ホテル社員、岐阜県議を経て衆院岐阜1区で初当選し、9期目。98年、戦後最年少(当時)の37歳で郵政相に就任(小渕恵三内閣)。2005年の郵政民営化法案の衆院採決で反対し、直後の衆院選は無所属で当選したが、自民党離党を迫られた。翌年の復党後、党総務会長、総務相などを歴任した。20年9月から現職。
長年の不妊治療を経て2011年、米国で卵子提供を受け、50歳で長男を出産。ブログで成長の記録などをつづる。
自民党幹事長代行の野田聖子衆院議員が7月7日、福岡市のホテルニューオータニであった毎日・世論フォーラム例会で「みらいを、つかめ」の演題で講演した。「次の解散・総選挙はとても厳しい」と次期衆院選に向け危機感を示した。
野田氏は、東京都議選(7月4日投開票)で自民党の議席が伸び悩んだことについて、地域政党「都民ファーストの会」特別顧問の小池百合子都知事の影響力だけが理由ではないと指摘。「個々の議員の個性が失われ、多様性がややなくなってきている自民党への不満がある」などと分析した。党内で女性の役職者増に取り組んでいることにも言及した。講演要旨は次の通り。
党の幹事長代行として、総理からも幹事長からも自分たちにできないことをやってほしいと言われている。それが女性側の政策だ。自民党の中には、わざわざ女性と言わないとならない空気がまん延していて、わざわざ言わなくてもいい空気をつくること。当たり前の空気を党全体に及ぶように急ピッチで進めていければと思う。
その一端として、三つのことを具体的にやっている。一つは女性のポストを増やすこと。あとは、政務調査会にあえて女性対策に特化した特別委員会を設置した。忘れられがちな、女性がメインとなるような政策はそこで孵化させて、本来の部会にもっていくことで、国策として届けられるシステムを作った。最後は、政治家志望の女性だけに限定した塾を開校した。男も女も一緒なんだという、当たり前の日常を自民党に取り戻すことを精いっぱいやっていきたいと思っている。
東京都議選は当選者127人中41人が女性議員。他党も含めて全体で女性が3割くらいだった。今回の都議選は、小池百合子さんが(退院して表に)出たからとかあるからそれは違う。本来、国民政党と言われて元々は多様だったが、若干多様じゃなくなっている自民党への不満がある。菅政権になって国政選挙というのは、都議選も負けと認めれば全部負けている。知事選で推薦出した人も負けたし、参院の補欠選挙もすべて推薦出した人が負けた。小池さんが出てきたからとごまかすのではなく、きちんと精査して何が起きているか、何を取り戻すか考えないといけない。バラエティーに富んだ自民党だったという姿を見せるためには、ずーっと行われていない一般党員による総裁選をやらないといけない。今まではずっと自民党の強さ故のロジックで総裁、総理を決めていた。国民との気持ちの乖離は生まれている。党本部に行くと、小池さんが出てきたからなあとみんな思わせぶりにいっているが、選挙区まわったら、ワクチン接種が突然止まったりするのが不安だと。自民党に任せておけば大丈夫だと思っていたのが、河野太郎大臣が中止すると言っている、自民党でも駄目なのかという声の方が多かった。自分の都合の悪いところを隠さずに、国民とちょっと距離ができてしまっている意識をただすことが総裁選の意味だと思う。
次の解散総選挙はとても厳しい。コロナで大勢の仲間が(地元に)帰っていない。私は中選挙区時代の人間なので、自民党じゃなくても野田聖子が好きだという人に支えられている。ただ、小選挙区から当選してきているのは自民党の名の下に寄り集まっている人で、この男を、この女を日本のためにという、家族のようなつながりが組織であるか。なかなかない気がする。
幹事長代行という仕事を通じて、自民党のいいところ、悪いところがいろいろ見えてきた。自民党のいいところはある意味、鷹揚なところ。何かあってもやり直すことができる政党。だが、今はどちらかというとその鷹揚さが仇となって、みなさんには厳しいことをいっているのに、仲間には甘いというのが出ている。テレワークというなら、本会議場をテレワークにしないといけない。自分たちで率先してテレワークの面倒くささを経験して、不安定さを経験してテレワークをして、と言わないといけないのに、自分たちは明治時代のまま、インターネットのない時代のような仕事っぷりで、国民にテレワークをしろというのはちょっと先進的な政策集団としてはいかがなものかなと苦言を呈し続けている。
ただ、この国に生まれてよかったなと思うのは、やはり大勢が、さまざまな不便を感じながら、しっかりマスク、手洗いをしたことで、コロナで超過死亡が世界中であるなか、不思議なことに2020年、この国は死者が減った。特に肺炎、インフルエンザ、脳卒中、心筋梗塞で亡くなる方の数が減っている。十数年ぶりに減少に転じている。死因は当然、コロナもあるが、一番多いのが老衰。長寿国家として、人生をまっとうできるという、2020年に関してだが、マスコミだとすごく大変なことが起きているが、高齢社会でどんどん亡くなる方が多い中、少なくなった。手洗いうがいで他の感染症を抑え込んで、とりわけインフルエンザという子供にとってシビアな病気がいまほとんど起きていない。いろいろ不便はあったが、健康が一番。コロナで例えば、若いお父さんたちが子供と過ごすという、かつてはあり得ない家族のあり方を経験できた。これは将来、お父さんが子供たちに愛されるようになっていく。引きこもりの人も、何かクリエイティブなことができるという発想を持てた。悪い点もあるが、いま、こういうことが可能になったと忘れずに、生かしていく日本の英知をつくっていきたい。よく皆さん、コロナが収束して、元の生活に戻りたいというが、元の生活はない。過去の歴史もない。明治のようにしたいというのはナンセンス。前に進んでいくためには、今あるポテンシャルをどう引っ張り出すか。本当は自民党がどんどんやっていかないといけないが、若干、皆さんの期待に応え切れていないところもあると痛感している。皆さんの声を聞きながら、しっかり取り組んでいければと思う。