毎日・世論フォーラム
2023 新春会員交流会
2023年2月20日
財務省政策立案総括審議官 渡部 晶

テーマ
「九州のミライ 地域振興のあり方を巡って」

会場:ホテルニューオータニ博多

加速する人口減少/
地域間連携が重要

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元村 有希子 財務省政策立案総括審議官
渡部 晶 氏

プロフィール

渡部 晶
(わたべ あきら)

 1963年、福島県平市(現いわき市)生まれ、京大法学部卒業。87年、大蔵省(現財務省)入省。文書課広報室長、国庫課長、地方課長、内閣府大臣官房審議官などを経て2022年6月から現職。この間、官民ファンドの(株)地域経済活性化支援機構で財務・人事担当執行役員、沖縄振興開発金融公庫副理事長・理事長職務代理などを歴任。01~03年には福岡市総務企画局長として市政健全化に取り組む。「ジョルダンニュース」や「経済プレミア」(毎日新聞デジタル)などで地域振興について発信している。

 毎日・世論フォーラムの新春会員交流会が2月20日、福岡市中央区のホテルニューオータニ博多で開かれ、財務省の渡部晶・政策立案総括審議官が「九州のミライ 地域振興のあり方を巡って」と題して講演した。渡部氏は幅広い話題に触れながら、個人的な見解として、人口減少が進む中で地域振興を進めるためには、地域間連携やリスクマネー(リスクを辞さない投融資)の蓄積などが重要だと語った。
 渡部氏は、今後、人口減少が加速することを指摘。「地方創生の計画ではどの自治体でも人口が増える話になっているが、マクロではあり得ない。冷静に自分の地域がどうなるかを見据える必要がある」と語った。そのうえで、九州ではスポーツが比較的盛んなことから、スポーツを通じた住民参加型の街づくりを進め、「シビックプライド(市民の誇り)」を醸成すべきだと提唱した。
 また、かつて課題だった国内全体の地域間格差はかなり縮小したとして、「東京で稼いだお金を地域に分配する手法は限界がきている」と強調し、地域産業をつくる必要性を主張。「夢や成長を得るためにはリスクマネーでないと対応できない」として、地域活性化のための小口投資の普及や、PFI(民間資本を活用した社会資本整備)やPPP(官民連携事業)の活用を挙げた。講演の一部を追加して紹介する。
※本講演の内容は渡部氏の個人的見解であり、財務省の公式見解を示すものではありません。

スポーツとまちづくり

 スポーツ庁の施策に「スポーツによるまちづくり」があり、これは国のデジタル田園都市国家構想でも大きな柱。ポイントは、住民参加でやっていくということと、スポーツは体育とは違うということ。例えば、五輪種目にもなったスケートボードは「楽しむもの」。人間修養ではなくレジャー、楽しいものだ。今の世の中はレジャーへと変わってきている。そのまちごとにスポーツが盛んであるということが、まちのプライドを作るために大事だ。九州は比較的、スポーツが盛ん。スポーツを通じた住民参加型の街づくりを進め、シビックプライドの醸成を考えていくべきだろう。

30 by 30

 会計検査院検査官の田中弥生さんたちは「エクセレントNPO」の顕彰活動をしている。
 自分たちで土地を買い、環境を守っていくナショナルトラスト運動は19世紀のイギリスで始まったが、こうした動きが日本でなかなか拡がらないのは、「市民性」「社会変革性」「組織安定性」というエクセレントNPOの要素が(運動や組織に)欠けているからではないかと思う。ファンドレイジングがうまくいかないということもある。ただ、国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、自然を保全する領域を30%にしようという国際合意(昆明・モントリオール生物多様性枠組=2030年までに地球上の陸域、海洋・沿岸域、内陸水域の30%を保護する合意。30by30)がなされており、これが進めば、ナショナルトラストも日本社会に入ってくるのではないか。    

九州のミライ

 今後の地域政策は、地域企業や農林水産業の生産性の向上、地域ごとの競争力・イノベーション強化――が重要だ。地域や域内で取引・交易する(地域中核)企業をどうやって作るか。そこで重要なのが「リスクマネー」。借入需要を満たすために提供する資金の原資が預金だと貸せる相手が限られるので、そこはリスクマネーを使ったらどうか。夢や成長を得るためにはリスクマネーでないと対応できないと思う。
 九州は非常にポテンシャルがある。域内に都市が分散し、個性的な都市がある。そういう良さを生かしながら今後を考えていく。だがその場合、快適な都市間交通を保つ努力を続ける必要がある。スイスは憲法を改正し、都市間交通を快適にする投資をしている。今、日本の公共交通は投資ができていない。そこを変えないと快適な交通は維持できない。  九州には豊かな自然もある。生物多様性の取り組みは国際的な合意ができており、この辺りは九州もやらないといけないと思う。30by30やナショナルトラスト運動が九州でも盛んになることを願っている。

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