毎日・世論フォーラム
第349回
2023年1月13日
毎日新聞論説委員 佐藤 千矢子

テーマ
「2023年日本政治の展望」

会場:ホテルニューオータニ博多

「衆院解散・総選挙は内閣改造後の今秋か」

佐藤 千矢子 毎日新聞論説委員
佐藤 千矢子 氏

プロフィール

佐藤 千矢子
(さとう・ちやこ)

 1965年生まれ。87年、毎日新聞社入社。長野支局、政治部、大阪社会部、外信部を経て、2001年から3年半、ワシントン特派員を務め、米同時多発テロ後のアフガニスタン紛争、イラク戦争、米大統領選を取材した。帰国後は、政治部官邸キャップ、政治部副部長、編集委員を経て、2013年から論説委員として安全保障法制などを担当。2017年に全国紙で女性として初めての政治部長に就き、その後、大阪本社編集局次長、論説副委員長、東京本社編集編成局総務を経て、2022年4月から現職。

 毎日新聞の佐藤千矢子論説委員が2023年1月13日、福岡市のホテルニューオータニ博多で開かれた毎日・世論フォーラム第349回例会で講演。「内閣を改造した後、秋の臨時国会で衆院解散・総選挙がある可能性が高い」との見立てを示した。講演要旨は次の通り。
 岸田文雄政権の発足当初は、2021年の自民党総裁選と衆院選、2022年の参院選の三つに勝つと、岸田政権は初めて本格政権になると言われていた。しかし2022年7月の安倍晋三元首相の銃撃事件で政治地図が変わった。党内右派に必要以上に気を使う政治をしなければならなくなった。その影響が一番起こったのが国葬。岸田政権が慌てずに早めに国会に諮るとか、非公式にでも野党と話して進めていたら、国葬の議論は変わっていただろう。
 2022年秋以降の岸田政権の支持率急落は、旧統一教会の問題が影響した。非常に甘く見ていて初動を誤った。首相は安倍派の問題だと思っていたが、安倍派以外にも多くの議員が関わっており、首相が問題から逃げているというイメージで見られた。自民党のアンケート結果の公表が銃撃事件から2カ月後で、内閣改造から1カ月後だった。実名を公表する、しない、ということでももめた。2022年末に被害者救済の新法を成立させて一区切りついたが、今でも問題は尾を引いていている。岸田首相は最近、賃上げを言っている。税制面の議論や政労使協議を、という話もあるが、最後は使用者側が決断してくれないといけない。政府が自分でやれることが限られているところが弱い。  防衛費の大幅増額については、一部を増税で賄おうと打ち出したが、国会論議が深まらない。額だけが踊った。財源の議論もいいが、防衛の中身の議論が飛んだ。安倍さんの時も説明がないと言われていたが、安倍さんはそれでも、講演でぶち上げたり、有識者会議を立ち上げたりしてプロセスを踏んでいた面がある。  衆院の解散論については、岸田首相は2024年秋の自民党総裁選でどう再選するかが大事。総裁選の後、2025年秋の衆院の任期満了までに衆院選をやればいい、と当初は言われていた。だが、総裁選の後に衆院選を持ってくると、やはり総裁選が戦いにくい。河野太郎氏のように人気の高い人が出てくると、衆院選の顔選びの総裁選になってしまう。そうなると岸田さんは苦戦するのではないか。
 また2025年に衆院解散を持っていくと、衆参同日選にしようという話が出てくる可能性もある。自民党は、それは避けたいだろう。2024年の総裁選前に衆院選をやり、そこそこ勝って、衆院選に勝ったのだから、総裁選は岸田さんの再選でいい、というふうに持っていきたいと思っているのではないか。ただ、政権を安定させ、内閣支持率を回復させていかないと、解散・総選挙はできない。
 じゃあいつあるのか。5月の広島でのG7サミット後、秋の臨時国会、来年の通常国会の会期末。この3パターンと思うが、私は秋の臨時国会と考える。この前に内閣改造と自民党役員人事をし、フレッシュな女性や若い人を登用して、その勢いで衆院選を戦う、と。秋の臨時国会で解散・総選挙がある可能性が高いのではないか。

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