民進党幹事長
枝野 幸男 氏
プロフィール
枝野 幸男
(えだの ゆきお)
1964年5月、栃木県宇都宮市生まれ51歳。東北大学法学部卒業後、24歳で司法試験に合格し、弁護士となる。当選8回。民主党結党に参加し、政務調査会長、憲法調査会長、衆議院決算行政監視委員長等を歴任。政権交代後、内閣府特命担当大臣(行政刷新)、幹事長、官房長官、内閣府特命担当大臣(沖縄・北方対策)、経済産業大臣など要職を務める。現在、民進党幹事長
第287回例会は、民進党の枝野幸男幹事長が「民進党の目指すもの~野党の責任」と題し講演会員140名が参加した。枝野氏は、夏の参院選の1人区(改選数1)について「条件が整えば勝てる枠組みはできた」と述べ、野党候補の一本化で安倍晋三政権への批判票の受け皿となる態勢が整いつつあるとの認識を示した。全国に32ある1人区では野党候補がほぼ出そろい、二十数選挙区で一本化できる見通し。枝野氏は、「『安倍さんひどいよね。野党に頑張らせなきゃね』という空気になった時に受け止められる候補者はそろえた」と自信を見せた 講演要旨は次の通り。
3月27日に民進党を結党した。綱領では「自由」「共生」「未来への責任」の三つを基本理念として掲げた。どれも抽象的なのでかみ砕いて、党が何を目指しているのか私なりの理解を話したい。
一番のポイントは「共生」だ。自由主義経済を基本に置きながら、共に支え合う社会を目指していく。共に支え合うと言うと弱者救済のような印象があるが、そうではない。人は、支える時もあれば、支えられる側に回ることもある。インターネットなどで自己責任論を振りかざして盛り上がっていたりするが、自己責任で全部完結できる人はいない。病気で倒れて体が不自由になるかもしれないし、安全な場所に住んでいると思ったら、真下に断層があり家が倒壊したという方もいる。「弱い人が可哀そうだから助けてあげる」という上から目線の話ではなくて、助ける余力があるときは助ける側に回る。これが共生であり、自己責任を強調する社会とは違う価値観に立っている。
その前提にあるのが「自由」だ。「多様性に対する寛容」という別の言い方もできる。皆が一緒であることを求めず、自分と違う価値観を、社会に迷惑を掛けない限り許容するという意味の自由だ。実はこの多様性を認める話は、具体的政策論や、経済などと全部つながってくる。例えば民主党も維新の党も、地方分権を重視してきた。そのベースの考え方は多様性だ。地方分権の目的は、各地域に財源と権限を渡すことでも、地方自治体を再編することでもない。それぞれの地方の個性を生かし、住民の意思を踏まえた多様な地域を作るため、行政システムをどう構築するかが本質にある。
明治維新までは、多様性と支え合いが日本社会の姿だった。新自由主義や社会の画一化は、日本の歴史でたかだか150年だと思う。その150年の歴史に基づく考え方が「保守」であるはずがない。日本の保守は、1500年の歴史を大切にするべきだ。日本国憲法を「米国の押しつけだ」という人がいるが、そもそも近代化文明自体が欧州からの借り物だ。しかし、1500年の歴史と伝統を大事にする軸が今の日本では消えかけている。もう一度そこを本来の場所に立て直すのが民進党の立ち位置だ。
日本はバブル崩壊後の20年あまり、経済が低迷した。日本は他の先進国に比べて内需が悪い。経済成長の唯一の方法は内需拡大だが、人口減少で国民が減ればモノが売れないのは当たり前だ。少子化対策は経済政策であり、少しでも少子化に歯止めをかけなければいけない。さらに、お金を持っている高齢者に使ってもらうため、年金の範囲内で医療も介護も受けられるようにして足元の消費を伸ばす。また、雇用の安定を作り、子育てと仕事の両立が難しければ社会全体で支える。この方法で経済を回す必要がある社会になっている。
三つ目の基本理念「未来への責任」はジレンマでもある。今説明した社会のあり方は「糖尿病対策」であり「漢方薬」だ。民主党政権の失敗は、糖尿病治療は一生懸命やったが痛み止めを打たなかった。安倍晋三首相の政策は痛み止めやカンフル剤としては非常に効果的だが、あくまで痛み止め。一方、私が説明したことは即効性がなく、じわっと効く。これが未来への責任のジレンマだ。でも痛み止めやカンフル剤より、中長期で本質的な治療をしたい。
夏の参院選は、条件が整えば勝てる条件を作ったつもりだ。「さすがに安倍さんひどい」「ちょっと野党を頑張らせなきゃ」という空気になった時、受けとめられる候補者はそろえた。おそらく衆院選とのダブル選になるだろう。今の選挙制度が続けば、いずれ2大政治勢力制になると楽観している。そのためには勢力の拮抗状態を作る必要があり、この夏の戦いは大事だ。ダブル選になっても、良い衆院候補者がそろっている。残りの2カ月間、臨機応変に対応できるように頑張りたい。