自民党政調会長
高市 早苗 氏
プロフィール
高市 早苗
(たかいち さなえ)
1961年奈良県生まれ。神戸大学卒業後、松下政経塾修了後、米連邦議会の立法調査官大学教員を経て、93年衆議院議員初当選。通産政務次官、経済産業副大臣を歴任。06年9月に発足した第1次安倍内閣で初入閣(内閣府特命担当大臣)、自由民主党広報本部長、12年政調会長。夫は自民党の山本拓衆院議員。
第267回例会は、自民党の高市早苗政調会長が「持続的な経済成長を目指して」と題し講演、会員160名が参加した。高市氏は、政府が6月に閣議決定した新たな成長戦略に関連し、女性の就労意欲を阻害するとの批判がある「配偶者控除」の見直しや労働時間の規制緩和を挙げ、安倍政権が掲げる「女性の活躍促進」策の必要性を改めて強調した。
高市氏は所得税の配偶者控除について、「女性にも会社での地位向上に残念な結果になっている」と指摘。自民党が夫婦それぞれが基礎控除を持ち、妻が使わない場合には夫が使える仕組みの導入を提言しているとして、政府が取り入れるよう求めた。講演要旨は次の通り。
安倍内閣が発足して間もなく1年と7カ月、かなり飛躍的に日本全体の経済政策の方向性が変わった。最近ちょっと世論調査で経済政策に対しての支持が下がっているのは残念だが、一昨年12月の時期に比べると、かなり前向きな空気になってきているのはまぐれもない事実だと思う。
自民党が一昨年末の公約集に書き込んだ政策がいくつかある。一つが物価目標2%の明記で、大胆な金融緩和は「第一の矢」という名がついた。行き過ぎた円高の中で緊急経済対策を策定することも明記し、「第二の矢」と呼ばれているが、政権発足して10兆円規模の補正予算が編成された。そして、成長への芽をしっかりと出していかないとならないということで、法人税率の引き下げ、インフラ輸出を進めることなども公約集に書いていた。
注目していただきたいのは、6四半期連続のGDPがプラス成長を続けており、その中身です。公共投資ばかりでなく、設備投資、個人消費の民需が伸びている。インフラ輸出も3倍に伸びた。有効求人倍率もリーマンショック直後は0・42で、今は1・09です。安倍内閣が掲げた戦略がうまく当たってきている。政権2年目の最大の課題は、業種や地方によって相当な差があるので、いかに地方で雇用や所得を増やせるよう浸透させていくかだ。
成長戦略の閣議決定を受けて年末までに政府が決める課題がいくつかある。一つは働き方の問題で、労働時間制度をどうするか。今までだったら時間単位で報酬を決めていた。これを一部の業種、つまり労働時間と成果物の因果関係がそれほどない業種について新たな提案をした。同じ量や質の仕事を任されて夕方5時までに仕上げた人より、残業して夜10時までやった人に残業代がつくのは不公平な話だ。一人当たりの時間当たりでみて、労働生産性はG7の中で日本が最下位。いつまで続けてもどうしようもないので、一定の成果で評価する。仕事が終わったら帰ってくださいと。政府が想定しているのは所得1000万円以上に限る方向だが、子育てをされている女性の中には成果で評価してほしいと考える人もいると思う。押し付ける残業代ゼロ法案と言われるが、そうではない。早く仕事が終われば自分の生活に充てられるという、一つの選択肢を増やす考え方の提案だ。
もう一つは配偶者控除の扱いです。あと何時間余計に働けるのに103万円超えるから休ませてと言わざるを得ない女性もいる。これ以上働くと所得で損をする段階が存在する。本気で働きたい女性にとっては会社での地位が損なわれることでもある。配偶者控除を否定するのではなく、新配偶者控除とでもいうか、その案を取りまとめた。夫と奥さんの両方が基礎控除を持っていて、夫婦両者の働きをそれぞれ評価していこうというのが自民党案です。
日本の法人税の標準税率はソウル、中国、欧州と比べても高い。日本企業が海外に拠点を移すか大きな判断材料になり、今回引き下げを決定した。安倍首相がドイツ並みと発言してしまったので、数年かけて29%台を目指してやっていくと。
もう一つ自民党から提案した。世界に冠たる健康保険制度だが、よく利用される方と自分で健康管理をして利用されない方がいる。介護もそう。健康について努力した人にメリットを与えられないだろうか。医療保険制度で個人に対してヘルスケアポイントを持ってもらったり、現金給付や自動車保険のように保険料の値下げをしたりするなどメリットを与えながら全体的な支出を減らしていけたらと思う。