毎日・世論フォーラム
第263回
平成26年3月5日
自民党総務会長 野田 聖子

テーマ
「今、思うこと」

会場:ソラリア西鉄ホテル

集団的自衛権「党の意見集約」

野田 聖子 自民党総務会長
野田 聖子 氏

プロフィール

野田 聖子
(のだ せいこ)

1960年福岡県生まれ、帝国ホテル社員を経て87年岐阜県議会議員選挙で当選、 93年第40回衆議院議員総選挙で初当選、98年第1次小渕内閣で郵政大臣、08年第2次福田内閣で内閣府特命担当大臣・消費者行政推進担当大臣 宇宙開発担当大臣、同年麻生内閣で内閣府特命担当大臣・消費者行政推進担当大臣 宇宙開発担当大臣、12年自由民主党総務会長、著書に「私は産みたい(新潮社 2004年)」「不器用(朝日新聞社 2007年)」「生まれた命にありがとう(新潮社 2011年)」等。

 第263回例会は、3月5日、自民党の野田聖子総務会長が「今、思うこと」と題して講演、会員170名が参加した。集団的自衛権の行使容認をめぐって協議する総務懇談会について「党の意思を代表できる意見集約ができればいい。国民の役に立つ政策をジャッジ(判定)したい」と述べ、党内論議を加速させる考えを示した。また特定秘密保護法について「適切な名称ではなかった」と指摘。「これからは(法案の)名称もチェックする。いくら(安倍晋三)首相の思いでも法案の中身がいいかげんなら通さない」と語り、より厳正に総務会で法案を審査する考えを示した。講演要旨は次の通り。

 両親が八幡製鉄に勤めていたため、私は北九州市の八幡で生まれた。政界に転じてからも福岡の先輩政治家から指導を受けており、福岡とは縁が深いと思っている。
 先の衆院選で新しい自民党ができた。自民党は与党時代が長く、自民にいれば、何でもできると思っていた。それが野党になり、与党時代の自民がいかにだめだったのかを思い知らされた。一つは官僚との距離感だ。自民党は情の部分で官僚とつながり過ぎていた。振り返ると官僚の手の平の上でさまざまなことをやらされていたのかもしれない。例えば、以前は「政治が為替に介入することはみっともないことだ」と官僚から言われた。だから為替介入は政策課題になっていかなかったが、野党になって官僚から距離を置いたら、そうではないと知った。
 二つ目は、例えば麻生政権時代に大型補正を組んだが、野党になった後で建設業界から「あんなことをしても何もならない」と言われた。与党時代に言ってくれなかったのは「与党に不平や不満を言うと仕事を干される」と思われたのかもしれない。野党になって、自民党は与党でいることの不安定さと、与党としてのありがたみを知ったと思う。だから、新しい自民党は謙虚さを心がけなければならないと思っている。
 安倍政権は支持率が高く安定している政権だが、これは安倍首相個人の人気だけではなく、安倍首相が大臣にした人たちの人気もあるからだろう。派閥順送りで組閣されていないという点もある。現在、党執行部は「政高党低だ」と言われているが、私はそうは思わない。石破幹事長、高市政調会長、そして私は、これまで自民党との関係が必ずしも良くはなかった。しかし、逆にそういう経験をしているからこそ、「右へならえ」でなくまともなことを言う政党にしたいという意志を持っていると思う。
 これまでずっと選挙が続いたが、本格的に安倍政権が動き出したのは臨時国会からだろう。NSCができ、特定秘密保護法が成立した。国の骨格となるような法案が矢継ぎ早に決まった。特定秘密保護法成立までの議論が少ないと批判されたが、40時間超の議論を重ねている。それに「特定秘密」という言葉の印象が悪いということもあったと思う。安保、外交、テロ、スパイに関し、国が不利になるような情報を流したら今までよりも強く罰そうという法律だが、法律名だけで国民がすぐに理解できるようにしないといけない。総務会では法律名についてもチェックをかけていくことにした。集団的自衛権の問題なども総務会がしっかりと議論をしていかなければならない。
 アベノミクスの1本目の矢は労せずして効果があった。円安に戻そうと市場が動き、企業業績が良くなり、株価が上がり、雇用も良くなり、一時金も出るようになっていっている。今年の目標は、このアベノミクスをもっと目に見えるものにしていくということだ。2本目の矢は公共事業だが、地方のことは地方の人たちにやってもらう公共事業にしていくことで地域経済を潤すようにし、国土強靱化を図る。3本目の矢は成長戦略だが、専門家の間では一時休暇を取って育児などをしている女性がみんな働けるようになればうまくいくと言われている。女性が働かないと、日本の経済はだめだという認識を持たないといけない。管理職を女性3割にしたい。これは少子化対策にもつながっていくと思う。
 もう右肩上がりの時代ではない。日本の人口は減っており、3000万人国家になったら高齢者は5割になっているだろう。私たちは次世代のことも考えなければならない。そういったことを考えていくことが成長戦略でもある。少子化は安全保障を支えられなくする恐れもある。謙虚に、何ができるか、何を残すかを考えないといけない。先々の日本を守ることこそが愛国者だと思う。

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