毎日・世論フォーラム
第328回
2020年12月16日
行政改革相 河野 太郎

テーマ
「規制改革と日本の課題」

会場:ホテルニューオータニ博多

行政手続きのオンライン化進める

河野 太郎 行政改革相
河野 太郎 氏

プロフィール

河野 太郎
(こうの たろう)

1963年1月、神奈川県生まれ。米ジョージタウン大卒。96年に衆院議員初当選。2002年、父の洋平・元衆院議長の生体肝移植手術でドナーになった。09年の自民党総裁選で谷垣禎一氏に次いで次点となる。防衛相(2019年~)として陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の計画停止を電撃的に発表し、耳目を集めた。自他共に認める合理主義者で、防衛省では「コストカッター」と恐れられた。ツイッターのフォロワー数は220万超を誇る。首相を目指すと公言している。

 河野太郎行政改革・規制改革担当相は12月16日、福岡市のホテルニューオータニ博多で開いた毎日・世論フォーラム12月例会で「規制改革と日本の課題」をテーマに講演した。約170人の聴衆を前に、霞が関の行政手続きについて「ほとんどがオンライン化できる」との認識を示し、各省庁に今後5年間でオンライン化できないものの報告を求めた上で、可否を精査していることを明らかにした。また、9月の就任直後に取り組んだ行政手続きの押印廃止で99%が廃止される見通しとなったことを踏まえ、「次のステップは、今やっている作業を全部オンラインに切り替えることだ」と強調した。講演の主な内容は次の通り。

 菅(義偉)内閣で行政改革、規制改革、国家公務員制度を担当している。国の行政の無駄も削らないといけないので行政改革も一生懸命やるが、いろいろなところで自己紹介するときは規制改革担当大臣と言っている。
 何のための規制改革かというと、世の中から見て、社会の側から見て、価値を生み出すための規制改革をしないといけない。例えば書類にはんこを押せというのがある。これは法律ではないが、その下の省令や通達で決まっているものがある。デジタル化のためにいろんなものを変えないといけない、あるいは仕事のやり方を変えないといけない。そのために規制を変えないといけない。
 デジタル化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)をなぜするか。今、日本の国は人口が急速に減っている。その中で少子化、高齢化が加速化している。本当に人間がやるべきこと、ぬくもり、寄り添うことが必要なことを人間がやり、必要がないものはロボットやAIに任せようと、そのためだ。いろいろな作業が全部デジタルでやれると、窓口に申請に来なくてもいい。窓口で受け付ける人の数を減らすことができる。行政だとそれを子育て部門に回したり、高齢者の対応に必要な部門に回したりできるようになる。
 霞が関も地方自治体も一つ一つデジタル化を進めないといけない。最初にスタートしたのが、必要のないはんこをやめようということ。全省庁で調べてもらったら1万4992の手続きで必要だった。認め印は全廃し85まで減った。次のステップは作業をオンラインに切り替えること。書面がいらなくなると、窓口で対面のやりとりをする必要がなくなる。人手が減るなかで今までと同じような人の使い方をしていたら世の中回らなくなる。ICT(情報通信技術)でできることはICTでやった方がいい。
 英国は政府がICナンバーをもっていて、それを通じてそれぞれの世帯の収入を週ごとに把握することができる。コロナで職を失っていきなり収入がなくなってしまった時に「あなたにはこういう支援策が適用されます」と言って、行政から連絡が来るそうだ。デジタル化が進めば、コロナ禍でいきなり収入がなくなった人がデータで浮かび上がってきて、政府、行政から「あなたはこういう支援の対象になっている」とお知らせがくる。マイナンバーを銀行口座に紐付けすれば、支援策に基づいた支援金がその口座に振り込まれて、行政から「あなたはこの支援の対象になったので、いくらの支援金をあなたの口座に振り込みました」と言って通知がくる。プッシュ型の行政ができるようになる。それがDXの結果だ。
 今まで10人でやっていたことが1人で行政手続きできるようになる、あるいは行政手続きをしに行く方も人手が減らせるようになる、ワンストップでいろんなことができる、あるいは行政からプッシュ型の行政で、申請を待つのでなく、必要なところに行政から手を差し伸べることができるようになる。そうやって必要なところにちゃんと人手をかけて寄り添うことができる。そういう社会を作る、これは紙では絶対できないから、DXというのが大事になってくると思う。
 前回の行革担当相をやったときに消費者庁が所管だったので、徳島県が移管に手を上げて、全員でなく少しずつ移転をすることをした。移るのが決まったのは消費者庁と京都の文化庁だけだったが、それは平成のやり方だったのかもしれない。徳島県で働きたい人はどこの省庁だろうが、徳島で働ける。福岡で働きたい人は内閣府でも福岡で働けるというのが令和のテレワークなのかなと思っている。霞が関でも介護をしないといけない、子育てをしないといけないという職員が増えている。だけど首都圏に両親がいるとは限らない。両親のいる秋田から内閣府の仕事ができればハッピーだ。
 今は霞が関がブラック化している。若手の官僚が若いうちにやめる。長時間労働でプライベートライフ、家庭と仕事が両立しない。各省が面接で新卒を引っ張ろうとする。他にどこを受けたか聞いて、横浜市役所とあると負ける。横浜市役所に勤めると転勤しても横浜市内だが、霞が関だと転勤で北海道、九州がある。だからこそ霞が関の人間がテレワークで働ける状況を作るのは重要だと思っている。書類をデジタル化することから始めていかないとテレワークにつながらない。きちんとやりたいと思っている。
 新しくできるデジタル庁だが、今までのITベンダーに任せていたシステムを組めるようにする。今までの霞が関と全く違う文化の人たちを呼ばないといけない。次官までの給料は出していいとなっているが、本当にできるITエンジニアはそれよりもらっている。ただ、国のシステムを作ったというのがエンジニアの勲章になって、民間の別の所に移っていける。そういう前提でITエンジニアは動くから、定年までいるという人事制度を作る必要はないし、制度に当てはめないといけないとなったら来てくれない。Tシャツにジーパンでも全くOKだと。霞が関に通勤してこいと言う必要もない。そういう人の取り方をデジタル庁がすることになるので、霞が関もそれをブレークスルーにして今の働き方を変えていくことになる。逆に、そういう風にしないといい人材を集めることができなくなる。それも公務員制度担当相としてしっかりやっていかないといけないと思う。

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